それは、イレギュラー。
それは、消さねばならないもの。
それは、私が生み出したもの。
私は、正常でなければ――――――ならない。
白い、白い、白しか存在しない部屋で私は確認する。
私たちに反抗する覚醒者を。
覚醒者が私たちに協力をしないということは別に珍しいことではない。
だから今現在私の側にいる覚醒者の数は、酷く少ない。
だが、無理矢理な方法で覚醒者を探り当てる真似をしたのだから、たとえ覚醒者本人がその事実を
知らないとしても私たちが強制的に協力させることはできない。
故に協力をしないという者は基本的に放っておく。
//――――――女神。――――――//
思考をかき乱すように頭に響く声。
まったく、彼は何度言わせればいいのだろうか?
「ここでは肉声でも伝わりますよ」
皮肉げに告げる。
1度や2度ならまだしも3桁目に突入しそうなくらいに言い続ければそうなるのも当然だ。
//―――――すいません。例の覚醒者についてですが…――――――//
「それなら今こちらでも確認しています。確認し次第彼を覚醒者からはずします」
//―――――そうですか。ティウルは発見した後、殺すと言っていましたが?――――――//
「それについては継続して結構です。話はそれだけですか?」
//―――――はい。では失礼します。――――――//
それっきり頭に響いた声は消えて無くなった。
ため息をついて、思考をするために自分を落ち着かせる。
数回深呼吸をして再び例の覚醒者を確認する。
彼が私たちに協力しないのは妹同然である人を、天魔の器である女性を、封じた事が直接の原因らしい。
だが、それが無くてもスラケンスの件を考えれば協力をしてくれそうには無い。
そんな人物だ。
「本当は…私が悪いのに」
私が生み出さなければ
あの天王と魔王という存在を
生み出さなければ――――――
「だけど……だからこそ」
私は非情であらねばならない
私は戦わなければならない
眼の前に青く光る小さい球体が現れる。
いくつも現れるそれを一つ掴んで握りつぶす。
球体は音も無く、光るわけでも無く、握りつぶした手の中で消え去った。
「さようなら、1人の覚醒者。いえ、私に刃向かうイレギュラーよ」
呟いて私はその白い、白い部屋から出た。
いざという戦いまでにせねばならないことはまだある。
私は部屋を出ても白いその通路をまっすぐ歩き出した。
イレギュラーとなった覚醒者の名前は――――カリム=ウォーレン
その名前はでも、私の記憶には残らなかった。
何故なら、覚えても無駄だから。
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