「どういうことですかっ!!」
サリスの声が部屋に響く。
その大音量の声に微動だにしない先生は平然と言い放った。
「言ったとおりだ。ファム=レイグナーに致命傷を与え仮死状態へと移行させ、現在封印中だ」
仕事を終えて帰ってきたサリスが耳にしたのはファムちゃんの事だった。
その話をしていた人物を締め上げ、次に俺を締め上げてそれが事実だと理解するやいなや先生の所に
駆け出した。
事実を淡々と述べられたことが気に入らないのか、それとも納得できないのかサリスは再び声を出す。
「どうして私を遠ざける必要があるんです!?」
「では逆に聞くが――――」
その淡々と事実だけを述べる先生があまりにも
「後ろにいるNo:7はいいとして、君はいざファム=レイグナーに封印を施す処置をする時に任務を
まっとうできるのか? 一切の抵抗も無く、だ」
「っ! それ、は………」
あまりにも普通すぎて、怒りも何も湧いてこなかった。
サリスも先生の言葉に反論できず言いよどむ。
「ならば、早く部屋に戻りたまえ」
何かを言おうとして、でも何を言えばいいのかわからないといった様子でサリスは部屋を出た。
俺もそれに続いて部屋を出ようとして、1つ確認せねばならないことがあるのを思い出した。
「先生」
「どうした、まだ何かあるのか?」
「あいつは、カリムはどうしましたか?」
あいつのことだから相手が先生だろうが構わずに戦いに行ったのは間違いない。
だが、それでどうなったのかは知らなかった。
「昨夜屋上で私と戦闘し、その最中に崖に落ちたよ。今朝空いているNo:2名を捜索に向かわせた。
発見した場合は処分するように命じてある」
「……そうですか」
できる限り普通にそう返し、部屋から出た。
そのまま自室に向かおうとして、視線を向けた先にサリスがいる事に気がついた。
「サリス――――」
呼びかけるが反応は無い。
近くまで歩み寄る。
サリスの顔は――――――――涙で濡れていた。
「あのね、アル」
近くまで来た俺を見てサリスは口を開いた。
「ずっと自分に言い聞かせて……納得できたと思ってた……」
それはまさしく俺もその通りで
「でも、実際それを目の当たりにしたら………駄目、だった」
そしてそれもまさしく俺もその通りで
「小さい時から結構いっしょにいて家族みたいに思ってた…妹みたいに…思ってた」
やっぱりそれもまさしく俺もその通りで
「だから……だから………」
「サリス」
無言でサリスの身体を抱き寄せ、頭を撫でる。
決して泣かないと思っていた人物を見ないようにして撫で続ける。
「俺も……お前と同じこと思ってた」
同じ教室だった、俺とサリスとカリムにファムちゃん。
小さい時からいっしょにいた4人はまるで家族のように思えて―――
「きっと納得できると思ってた……思ってたんだ」
でも今この胸に在るのは、どうしても納得できない自分の意思。
そして、今まであったものが突如無くなったことによる虚無感。
「だけど………納得できる自信が、無い」
そう告げて―――――――
いつの間にか自分も泣いていることに、気がついた。
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