眼の前の部屋の扉を開けて中に入る。
太陽の光が差し込んでいる、それしか感じられない部屋。
ファム=レイグナーの部屋。
中まで歩いて行って立ち止まり、私は―――またもや泣きそうになった。
必死に涙が流れそうになるのを堪える。
どうやらうまくいったらしく、しばらくして涙が出る気配は無くなった。
「そういえば………」
後でアルに先程泣いていた事を口止めさせとかないといけない。
別に泣かない人間と思われたいわけでもないが、アルの手にかかると変に周りに広められかねない。
……それだけは阻止せねば
と、意気込んで部屋を見回す。
そこは先日まで生活をしていた雰囲気が漂っている。
だけどこの部屋の住人はもう、いない。
その事実がまた私を泣かせようとするが、そうそう泣くわけにもいかない。
ファムは仮死状態であって死んだわけではない。
なのに私が泣いてしまっては、それはファムが死んだと認めてしまうものだ。
だから、泣くわけにはいかない。
「……よし」
それだけ呟いて部屋の中にある物を確認する。
どうせ連中のことだからファムの部屋を空き部屋にするつもりだろう。
その前に最低限の物だけ選んで持ち出しておかないといけない。
「これは……いらないだろうし、これも……いらないよねぇ」
とりあえず勝手な判断でいりそうな物とそうでない物とを選り分けていく。
と、机の上にある日記を持ち上げた時に中に挟んであったメモ用紙のようなものが床に落ちた。
「何………これ?」
拾い上げて中身を見る。
そこにはよく知る弟のような存在である人物の字が書かれたいた。
なるほど……
暗かったファムがある日突然明るくなった原因はコレだったのか。
らしいと言えばらしい、とっても。
「これは…絶対にいるなぁ」
苦笑して箱に日記とメモ用紙を入れる。
◇◇----------------------------------------------------------◇◇
「ま、こんなものかな」
一通りいりそうな物を箱に詰め込んでそれを持ち上げ、部屋を出る。
それを自分の部屋まで運んで、一息ついた。
ついたはいいが、そうすることでこれからどうしようかという考えがよぎった。
恐らく私はNoとしてまともに行動できないし、その自信もない。
だからとてファムを助けることなどできるわけない。
それができるならそもそも私は今こうしていないだろう。
でも―――――――
壁に掛けてある一枚の写真を見る。
私とファムの二人が並んで写っている写真。
この"ディスウィリウム"にいるほとんどの人間は孤児だ。
その中で私とアルは仲がよかった。
その時のカリムとファム程ではなかったが。
ともかく兄妹にしか見えなかった2人が孤児の中では珍しく感じ、アルといっしょに話しかけた。
それがきっかけでその後4人でいることが多くなった。
私から見ればカリムとファムは弟と妹にしか見えなかったし、2人も私とアルを兄と姉と見ていただろう。
家族。
「そう…家族」
写真に触れる。
その写真の中のファムは、笑っていた。
私も―――――――笑っていた。
「………………そうよね」
決意して、私は早々に部屋を出て行った。
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