最後にいろいろと問題はあったものの長いようで短かった夏休みも終わりを告げ
学校は二学期に入っていた。
「武〜、お昼食べよう」
昼休み。
教室の前の席にいた四神が、後ろの方の俺の席にとことこと歩いてきた。
ちなみに何故四神と同じクラスになっているのかというと、この学校はおかしなことに
二学期の始めに二年、三年のクラス替えが行われるのである。
何でも来月の学校祭と体育祭までにどれだけ環境に馴染めるかを見るためらしいが、生徒側からすれば迷惑以外の何者でもない。
始めに四神と同じクラスと知った時は一学期の終業式のようなことがあるのではないかと思ったのだが、四神が何かしたらしく
これといったことは無かった。
「あ、俺もご一緒していい?」
四神がこちらに辿り着くと同時、横から沙理縞が顔を見せた。
「うん、いいよー」
「何でお前まで同じクラスなんだよ…」
「まぁいいじゃんか。行こうぜ」
「そうそう。早く行きましょ武」
ため息をつく俺を無視しつつ二人は仲良くいつもの場所へと歩き出していく。
もう一度ため息をついて俺も席を立った。
「あ、先輩方お先です」
三人揃って例の秘密の場所へとやってくると既に皇 三帝が昼食をとっていた。
軽く声をかけて、ソファーに四人では狭いという理由で持ち込んだ椅子に座る。
そして二学期が始まって恒例となりつつある風景になると、皇が持ってきた小型のラジオから
昼のニュースが聞こえてきた。
それは街中を歩いていた少年の集団の一人が突然暴れだし、一緒にいた友達を撲殺したというものだった。
犯行に及んだ少年は身体が勝手に動いたんだというだけで、警察ではしばらく取調べを続けるとのことだ。
「そういえばこの間も似たような事件が二、三件ありましたよね?」
そのニュースを聞いた皇がポツリと呟く。
確かに最近身体が勝手に動いて人を殺したという事件が起きている。
が、場所も時間もバラバラで容疑者に共通点が無いことから警察では関連性はないとしている。
「まぁ、最近ではストレスとかでおかしくなる人がいても不思議じゃないしな〜」
「確かに、最近はそういうのネットとかでもあるしね」
「でも、身体が勝手にって言うのも変じゃないです?」
口々に話し合う三人を見ながら四神の作った弁当を食べる。
と、そこへ―――
「君達、ここは立入禁止だって教えたハズだけどね?」
声に反応して部屋の入り口を見る。
そこには渋い緑色の髪に、線のような眼で二十代後半と思われる男性が立っていた。
少ししわのあるスーツを着たその男性―――――――シーウェルン=カルク=タスナはこちらを見て
のんきに笑っていた。
「あ、カルク先生じゃん。お昼〜?」
そう、何を隠そうカルクは二学期から俺の学校の教師としてやって来ていた。
沙理縞に話しかけられたカルクはにっこりと笑った。
「そういうことです。お邪魔しますよ〜」
「先生、脅かさないでくださいよ」
「はは、すいません皇君。以後気をつけます」
そして近くにあった空いている椅子を引き寄せそれに座る。
そのままお喋りをしながら昼を食べるのが最近では恒例の恒例になりつつある。
今日も例によってお喋りが始まった。
話しているのは先程のニュースのことについてである。
四神と皇と沙理縞があれこれと考えを述べるのをカルクが聞いて意見を返すといった形だった。
その話の途中、カルクが何度か神妙な顔つきをしたのが、何となく気になった。
「お、チャイムだ」
「あ、じゃ僕先に行きますね」
「うん。じゃあね皇君」
ぺこりとお辞儀をして去っていく皇を見送って俺も椅子を元の場所に置いた。
そこへカルクがやって来て同じように椅子を置いていく。
その去り際、
「放課後、初美ちゃんと一緒に僕のところに来てください」
と耳打ちしていった。
「俺は午後はサボリ」
と言う沙理縞とはそこで別れて俺は四神と二人で教室へと帰る。
とりあえずカルクに言われたことを四神に言うと四神は不思議そうな顔をした。
「何の用かしら?」
「さぁ、とにかく放課後には分かるんだろうよ」
「ま…あ、そうね」
特に気に留めるわけでもなく、俺たちはそのまま教室をめざした。
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