「さて、どう殺そうか。お互いに殺し合わせるというのもおもしろいんだが…そうだな、おい男の方、首から上は動かしてもいいぞ」
皇が告げると同時、言葉どうり首から上が動かせるようになる。
すぐに隣の四神 初美の様子を確認すると、座り込んで動けないでいるようだった。
「じゃあ、女―――――――壊れろ」
「あ―――、ああああああああああああああっ!!!」
皇が四神 初美に告げると、いきなり四神 初美が悲鳴をあげた。
「ははは! 肉体を破壊するのは僕でなくとも簡単にできるからね、精神を破壊させてもらう」
笑いながら、悲鳴をあげ続ける四神 初美を見下ろす皇。
「あああっ……!! あああああああああああああああっ!!」
「おい! 四神!!」
動く事ができないせいで、表情も変えずただ悲鳴をあげる四神 初美。
その光景を見てもなお、決して動かない身体に苛立ちを覚える。
「はは、悔しいかい? 見てるだけしかできないのは。でも君もすぐ死ぬんだからどうということはない」
死ぬ。
その単語に恐怖など感じはしない。
つい最近まではそれが迫れば受け入れようとも思っていたくらいなのだから。
だけど今は四神 初美と契約し、協力している以上簡単には死ぬわけにはいかなくなった。
それは四神 初美が死んでしまえばどうでもよくなる話だ、間違いなく。
でも、四神 初美は
――――――――――――まだ死んではいない。
ならばせめてそれまでは粘らないと嘘ってものだ。
自分をそう奮い立たせて必死に身体を動かそうとした。
一切の感覚が感じられない身体に入っているかも分からない力を入れる。
それでも力を入れているんだと判断できるのは自由になっている頭に血管が浮き出ているが分かるから。
その血管が千切れそうになるくらいに力を入れているが、動かない。
動かない、動かない、動かない、動かない、動かない、動かない、動かない、動かない、動かない、
動かない、動かない、動かない、動かない、動かない、動かない、動かない、動かない、動かない、
動かない、動かない、動かない、動かない、動かない、動かない、動かない、動かない、動かない――――!!
呪詛のように繰り返し、歯を食いしばるがそれでも動かない。
「あ…ああ………あああっ!!!!」
「簡単に死んでくれるなよ四神! お前が俺に生きてみろって言ったんだろう!?」
自分が無理を言っているのは理解しているが、でも生きてみろと言ったのは紛れもなく彼女だし
死ぬまでは、簡単に死んでもらうわけにはいかないのも事実だ。
「諦めなよ、もうすぐ彼女の精神は壊れるさ」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
「四神っ!!」
「はははは!! 壊れろ! 壊れろ! あはははははははは!!」
「――――――――そこまでにしておいたらどうだい?」
声は唐突に皇の背後から聞こえた。
皇は慌てて背後を見る。
俺も視線をそちらに送ると、そこには一人の男が立っていた。
渋めの緑色の髪というだけでも目立つのに、この真夏に長袖の服を着ている。
おまけになにやら変な模様の施されたジャケットのようなものまで着ている男は、でも不思議と
当たり前のような感じを与えさせてきた。
その男はまるで閉じられたいるかのような線みたいな眼でにっこりと笑いこちらを見ている。
「貴様――――――何者だ?」
皇にそう聞かれた男は、マジシャンのようにお辞儀をして――
「シーウェルン=カルク=タスナ…ただの魔法使いですよ」
笑いながらそう言った。
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