皇への対策、それにおける準備をしているうちに日は暮れようとしていた。
夜までもう間もない時間に少し早い感はあるものの家を出る事にした。
消えそうになればなるほどその輝きを増していると思える夕日はでも街を巡るうちにその輝きを
失い、夜になったことを告げた。
「そろそろ気を引き締めないとね」
隣を歩いている四神が話しかけてくる。
「そうだな、いつ皇と遭遇してもおかしくない」
「じゃあ、もう始めてもいいってわけだぁな?」
声は突然に自然に割り込んできた。
身構える。
場所は普段ならば人で溢れかえっている繁華街のとある交差点。
もちろん今は誰も出歩いてなどいない、無人である。
その広い場所の中、眼の前に皇 三帝が立っていた。
「探したんだぜ、これでも。早くお前達を粉々に吹き飛ばしたくてな」
「奇遇だな。俺たちもお前を殺そうと思ってたんだ」
それだけ言葉を交わしてお互い無言になる。
否、お互いがお互いを殺すと宣言したのだからそれ以上の言葉を交わす必要など、ない。
僅かな間の後、皇が跳んだ。
四神が同調するのと、武が刀を抜くのは――――――――――同時。
一跳びで武の間合いの中にまで入り込んできた皇が握りしめた拳を振るうのと
武が皇の拳に片方の手を突き刺すのも――――――――――同時。
まるでゼリーに突き刺すような感触の後、殴りかかった方の手が殺され地面に落ちる。
その光景に戦慄と恍惚を覚えながら、皇は蹴りを繰り出す。
武は後ろに跳んでそれを避けて、刀を振り下ろす。
避けていたのでは間に合わないと判断した皇は、健在な方の拳を地面につき立てる。
何の音もたてずにただ地面に無数の亀裂が入る。
それにより武の一振りは皇からそれて空を斬る。
武が体勢を立て直すよりも前に皇は拳を突き出す。
武は先程の皇と同じように刀を地面に突き刺す。
その瞬間に周囲一体の地面は殺された。
破壊など程遠い。
地面が崩れる。
武が刀を突き刺した地点を中心にまるでそこにだけ隕石の直撃があったかのように。
皇は落ちゆく身体を必死に制御して、今だ引くことの無い戦慄と恍惚に身を震わせた。
やがて身体は下にあった下水道へと足をつけた。
膝を曲げて衝撃を吸収させ、辺りを見回す。
そして見つけた。
眼の前に立っている刀を持った死神を。
「はは、ははは―――――」
知らず笑いが零れる。
桁が違う。
破壊と殺し―――――――――比べようもない。
破壊は程度こそあれ修復ができる、だが死神の能力はそれすら許さない"死"というもの。
ただ拳を添えるだけで粉々に粉砕できる自分と、刀なんてなくても手を突き刺すだけでも殺せる相手。
これ程の差―――――――覆しようなどない。
だけど、自分が笑ったのはその事実に諦めたからではない。
むしろ嬉しいのだ。
これほどの戦慄と恍惚を与える相手と殺し合えるというその事実が。
そんな人物を眼の前にできるこの瞬間が。
「あんた、前とは比べもんにならねぇ…最高だ!!」
歓喜の叫びをあげ、皇は死神に向かい疾走した。
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