少年は信じていた。
自分を生んだ瞬間『駄目だ』と落胆した母親にも
『どうしようもない』と自分が生まれるよりも前、早々に背を向けた父親にも
『役立たず』と『落ちこぼれ』と罵ってくる周囲の者達にも
明らかに自分を見下す世間の眼にも
負けずに少年は信じていた。
自分の祖父を。
自分がそんな状況にいる大元にして元凶。
他者を認めることが少なければ馬鹿にすることも少ない魔法使いの間で
彼を知るほとんどの人間が『愚か者』と決めつけた祖父を。
唯の一つも疑わず少年は信じていた。
そんな、
――――魔法の使えない魔法使いの
運命が変わった話。
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