「ああ、くそ…昨日は散々だったな」
まだ麻酔の影響があるのか気だるい身体を無理矢理起こす。
どちらかと言えば気だるいよりはあちこち痛い気もする。
とにかくどうやら俺は昨日ぶっ倒れた後、そのまま家まで運ばれたらしい。
その証拠に―――――
「いつまで寝てるんだこのダメ警官!」
ポーレウスがソファーで堂々と眠っていた。
頭に問答無用で蹴りをいれる。
「痛っ!………ここは?」
頭を擦りながら起き上がりきょろきょろと辺りを見回すポーレウス。
寝ぼけているその眼で俺を視界に入れたポーレウスはふと考え込んで驚愕の顔をした。
「私をこんな所に連れ込んでどうしようっていうんですか!?」
「ベタなボケかましてねぇでとっとと起きろ!!」
先程蹴りつけた部分にかかとをくらわせる。
朝から何疲れさせてくれるんだかこいつは……。
「うう……頭がぁ〜………あ、カリムさん。おはようございます」
次こそちゃんと眼を覚ましたっぽいポーレウスがぺこりと頭を下げる。
まぁ…そんなことはどうでもいい。
「何でお前がさも当然のようにソファーで寝てるんだ?」
「昨日カリムさんが倒れた後必死に運んでベットに寝かせたんですよ!? 街からこの家まで運べば
誰だって疲れます! ですからその場に眠りやすそうなソファーがあれば眠るのはもう必然なんです」
「当たり前のようにきっぱり言われても困るんだがな。んで、どうやってお前1人で俺を運んだんだ?
口で言うほど楽じゃないだろ、それ」
「ええ、両足を縄で縛って引っ張ってです」
「うおぃ!! だからか! 身体のあちこち痛えのは!! ってうわ! 足に縄の跡ついてるじゃねぇか!!」
ポーレウスに怒鳴った途端足まで痛み始めた。
とゆうかもう身体のあちこちをぶつけたということを事実と認めたせいで痛みが明確になってきた。
「大丈夫ですか?」
心配そうな顔をして痛みに顔をしかめる俺を見つめるポーレウス。
「一体誰のせいだろうな?」
「本当に許せませんね、昨日の犯人。というわけで私は帰ります、では」
「おい! 本気で言ってやがるのかてめ―――――」
ポーレウスの答えに怒鳴ろうとするが、それよりも先にポーレウスは素早く立ち去ってしまった。
聞く相手のいなくなった言葉は開けっ放しのドアの彼方へと消えていく。
口論の最中にカッとなって相手を殺してしまう人の心境が少しだけ分かった気がした。
「待て、とりあえず落ち着くんだ俺」
怒りは判断を迷わせる。
深呼吸、深呼吸、……そうだ。
「………バイト探しに行かないとな」
そう、あんなダメ警官の事など綺麗さっぱり忘れるんだ。
あれだ、台風に直撃されたようなもんだと思えばいい、うん。
今日からは前と同じ平凡な日々がやって来る―――――
「って納得できるかーーーー!!!」
どう考えても俺は悪くねぇだろうが!! ええっ!?
NEXT
TOPへ