何で俺が名指しで呼ばれないといけないのかさっぱりだが、いい予感はしない。
ここは逃げるが勝ちだろう。
――――――と。
「どこへ行くんですかカリムさん?」
つい先程人に大声を出すなと言ったダメ警官が確かに大きくはないが、しかし小さくもない声で
俺を引き止めた。
この微妙に緊張感で静まった空間で。
「ばっ……!!」
慌ててポーレウスの口を塞ぐが時既に遅し。
その場にいた人間の視線が全て俺に向けられてた。
その中にはもちろん犯人もいた。
そして眼を見開いて俺を見つめた犯人は一際大きく叫んだ。
「お前だあああぁぁぁぁっ!!!!」
「お前のせいだ! このダメ21警官ーーーーーーー!!!」
ああ、くそぅ……まぁばれたのならしかたがない、潔く行くとしよう。
だが、その前にポーレウスに小声で話しかけた。
「おいダメ21警官。お前のダメの数がチャラになるか倍になるかの話だ」
「ですからダメはやめてください! で、何ですか?」
「俺があいつと話してなるべく時間を稼いでやる。その間に麻酔針撃ち込んじまえ」
「……本当にいろいろ詳しいんですねカリムさんは。でもまぁ分かりました」
警察機構の基本装備の1つである手首に装備された武器。
3本の麻酔針を連続して発射するともすれば暗器とも言えるそれの効果は大型の肉食獣でさえ眠らせる。
らしい。
「じゃあヨロシク」
それだけ言って犯人の近くまで歩いた。
近づけば近づく程犯人の顔が険しくなっていくのだが、そもそも俺にはまったく思い当たるところがない。
「とりあえず何で俺を指名したのかだけ聞かせて欲しいんだけど」
「ああん?」
………何かマズイことを聞いたのだろうか俺は?
「お前……まさか俺のこと覚えてないってんじゃあないだろうな?」
今のから察するに俺は犯人と面識があるらしいんだが……
覚えてないんです
「悪いんだけど俺人の顔覚えるの苦手でさ……ハハハ」
「てめぇ!! 自分が捕まえてサツに引き渡したんだぞ!! なのに覚えてないだと!!?」
「俺が…あんたを捕まえて警察に?」
そんなことあったっけ?
いや…………………待てよ。
そう言われればそんなこともあったような気がする。
それも昔のことでなくそこそこ最近。
「う〜〜〜〜〜ん………」
「本当に忘れてやがるのか!? 俺だ! 爆弾魔のシクリェアーだっ!!!」
「爆弾魔………ああっ!」
「思い出したか!?」
「工事現場のおっちゃん!!」
「何でだああああああああああっ!!!!」
「違うのか? 工事現場でバイトしてた時に爆弾の知識がやたら豊富なおっちゃんがいて確かあだ名が
爆弾魔だった気がしたんだけどな」
違うのか。
う〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん、誰だったっけなぁ?
「本当に覚えてないのかよ! ええい、くそっ!! 2ヵ月前! 夜の街灯の下!!」
「2ヶ月前? 夜の街灯の下…………あああああああっ!!!」
思い出した!
2ヶ月前バイトの帰り道に街灯の下で何やらゴソゴソやっている奴がいたんで声をかけたらそいつが
襲い掛かってきたんで返り討ちにしたら実は少し有名な爆弾魔だったという結構ありきたりな話だ。
「あの時の奴か!」
「へへ…やっと思い出したか。今さら助かりたいなんて思わねぇがお前には借りを返さないと気が済まない
んでなぁ。こうして復讐に来たんだよ」
「なるほどねぇ……でも何で俺がこの街に住んでるって知ってるんだお前?」
「夜の街うろつく奴なんざ俺みたいな犯罪者か街に住んでる奴くらいだろうが!」
確かにその通りだ。
心の中でそう頷いて建物を回りこんで犯人の背後に現れたポーレウスの姿を確認する。
「それでどうするんだ? 俺と一緒に爆発でもするか?」
ポーレウスが右の手首に装備された武器を構えて狙いを定める。
「はっ! 野郎と自爆なんてこっちからお断りだよ!!」
そして―――――引き金に指をかけて、一気に引く。
「はうっ」
「あ……」
間抜けな声を出して俺が地面に膝をつく。
意識が持っていかれそうになるが寸前の所でなんとか堪える。
それを支えているのはただ1つ―――怒りだけだった。
「こぉんの……ダメ42警官がああぁぁぁっ………!!!」
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