「申し訳ありませんでした」
街の喫茶店。
正面に座っているポーレウスはペコリと頭を下げる。
そのまま顔を上げて恐る恐る聞いてきた。
「あの……まだ怒っていますか?」
「いいや」
ああそうだ。
俺は何てったって心が広いつもりだ。
だから――――――
「バイトに遅刻した理由を、その原因であるダメ警官に説明させたらどこをどうすればそういうことに
なるのか分からないような説明をしてくれて、そのせいでバイトがクビになったからって俺は別にそのダメダメ
警官に対して微塵の怒りも持たないね」
「もの凄く怒ってるじゃないですか。あとダメを増やさないで下さい」
「物事の理由をしっかり説明できんような奴はそれで充分だ」
「だから謝ってるじゃないですか」
「謝られようが収入源が見つかるわけじゃないだろうが! どーしてくれるんだよ!! あそこをクビになったら
自慢じゃないが生きていけないぞ、俺は!!」
まさに生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされたわけだ。
そんな時に喫茶店に行くのもどうかと思うが、コーヒー1杯だけだし、ポーレウスに奢らせるからまぁいいとして。
どうにか新しいバイトを見つけないと、それもできれば明日までには。
でないと多分厳しい。
「本当に自慢になりませんね……私みたいにちゃんと職に就かないとだめですよ?」
「……ダメダメダメ警官に言われたかないわい」
「ま、またダメを増やしましたね…!」
「ああ、どんだけでも増やしてやる。ったく本当にどうしてくれるんだか………」
「分かりました」
「へ?」
何が分かったって?
あまりいい予感がしないんだが。
「私があなたの新しいバイト先を探すのを手伝います」
「結構だ。いや本当の本当に」
「遠慮はいりません。さぁ、そうと決まれば行きましょう!」
「本当にいらねぇっての!! おい! 人の話聞けよな!!」
だが、俺の叫びも空しくポーレウスはきっちりした足どりで店を出ていた。
ん………何か引っかかるような…………?
「お客様」
「ん?」
「お会計の方よろしいでしょうか?」
「あ…ああ!!」
あの女!
俺に金を払わせる気かよ!!
「戻って来んかい、このダメダメダメダメ警官ーーーーーーーー!!!!!」
この様子だと今日でどれだけ『ダメ』が増えるのだろうか。
――――――――考えたくもなかった。
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