「あ……っと――――」

 ポーレウスがゆっくりと俺を見る。
 そしてぎこちない笑みで告げた。

「さ、さぁ…行きましょうか」

待てや、コラ

 振り下ろしたかかとがポーレウスの脳天に直撃する。
 ふらふらとよろめきながらポーレウスは涙目で訴えるように睨んできた。

「何をするんです…!」

「どうすれば今のやり取りを見てなお、俺を連行しようと思えるんだよ!!」

 この女の眼は節穴か?
 とゆうかそもそもこの女は本当に警官なのか?
 …………怪しすぎる
 疑問がふつふつと湧き上がってくる俺をよそにポーレウスは自信有り気だった。

「どうせ今の人もあなたの仲間でしょう。なかなかの演技でしたが私の眼は誤魔化せませんよ」

「こいつ……………」

 思わず叫びそうになるが堪える。  言い争いするだけ時間の無駄もいいところだろう。
 ここはどうすればいいか考えねば。

「警部。詐欺師のハウンディ=ルイシウンを捕まえました。今からそちらに向かいますので」

 見ればポーレウスが小型の魔導通信機で会話している。
 何か悩んでいる間に着々と事が進められているが、とりあえず無視だ。
 こいつを納得させるにはどう言えばいいのか考えねば。

『はぁ? 何言ってるんだ? そいつなら今さっき俺が捕まえてここにいるぞ』

「え?」

 その言葉で―――――
確実に時が止まった。
 少なくともポーレウスは。

『馬鹿言ってねぇで早く帰って来い! いいな』

 張り詰めた糸が切れたかのような小気味よい音を立てて通信機が切れる。
 再び重たい空気が場を支配した。

「さて……俺が無実だと証明されたようだけど?」

 なるべく脅すような口調で告げる。
 これくらいはしないと割に合わないってもんだ。
 ポーレウスは困ったような顔をしてしばらく俺を見たかと思うと口を開いた。

「さ、さぁ…行きましょう?」





「クエスチョン付けても意味ないわあぁぁっ!!!」





 今度はそのまま蹴り倒す。
 いいかげんに自分の非を認めやがれーーーーーー!!!!

 肝心のポーレウスは倒れた状態で動かないでいた。
 こうして自然な朝は騒々しく荒らされた。


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