「曲がりに曲がった道を通って不本意ながらお前の仕事のアシストをすることになった
カリム=ウォーレンだ」

「何で不本意を強調するのかよく分かりませんが。よろしくお願いします」

 午後の街中。
 一方的な契約が成立した後(金だけはきっかり必要以上いただくが)すぐにポーレウスの
自主的パトロールなんぞに付き合わされるはめになった。
 おっさん曰く『これも仕事だ』そうだ。

「本人が自主的にやってることくらい別にいいだろうが…」

「何か言いましたか?」

「いや……って、お前ってさ――――」

 俺より頭1つ分小さいくらいの身長。
 黒と青が基調の警察機構の制服とおそらく付属品以下の認識がされてそうな小さめの帽子。
 なんか冷静さを感じさせる眼つきと雰囲気。
 この辺じゃまず見かけないだろう紫の髪と眼。
 まあ最初と最後の1つはともかくとして――――――――

こうしてちゃんと見れば警察機構の人間っぽいんだな





「っぽいではなくてそうなんですっ!!」





「さ、さっさとパトロール済ませようぜ。最近晩飯は自炊だから早く帰りたいんだ」

「ああっ! 待ってください! っていうかパトロールコース知らないでしょうカリムさん!?」

 早歩きしていた足を止める。
 確かにポーレウスについていかなければ意味がない。
 ああ、早速嫌になってきたぞ。





「誰か!! ドロボウよーーーーーー!!!」





「あっちからです! 急いで!!」

「うわ、こんな時だけ早いなオイ!!」

 悲鳴の聞こえた所まで走ると、1人の女性と、その奥に走り去っていく男性らしい人影が見えた。

「どうしました!?」

「あの男がサイフとその他危険な物からちょっと恥ずかしい物まで入ったバックを!!」

「いや……え〜っと、それはどうなんだ一体?」

「何言ってるんですか! 早く捕まえないと!!」

「え、ツッコミとか職務質問とか無し!?」

 俺の叫びは聞かれることなく通り過ぎ、ポーレウスは手首に巻かれた武器を構える。
 そして狙いを定めて、発射。

「あうっ」

 バタリと近くにいた女性のが倒れる。







「昨日と同じようなネタはいらん!!」







 後頭部に拳の一撃!
 俺はともかくまったくの一般人、それも被害者に麻酔針撃ち込みやがった。
 って、ドロボウが逃げちまう!

「くそっ――――――赤の契約により生まれし鉄槌!」

 腰に隠していた銃を引き抜き適当に狙いを定めて発砲。
 銃弾は犯人の後方の地面に命中し、爆発した。
 情けない悲鳴を上げながら空高く舞い上がったドロボウが重力に従い地面に落下する。
 まさか街中で『銃魔法』使うハメになるとはなぁ〜
 ま、あの周辺は建物とか無かったからよかったけど。
 ドロボウも派手なふっ飛びかたしたけど見た目ほど怪我はしてないはずだし。
 衝撃で気絶しているドロボウの側へと歩いていく。
 どうやらバックは服の下に隠していたらしく無傷だった。

「ほい、あんたのバックってこれでいいんだろ?」

「ああ! 危険な物やちょっと恥ずかしい物が入った私のバック!!」

「いや……だから、いいのか、これ? ていうか麻酔の効果切れるの早いなあんた」

 ってどうせ誰も何も言ってくれないしいいということにしておこう。

「おい、ボケッとしてないで早く手錠かけちまえよ」

「あ、は、はい」

 小走りに駆け出してポーレウスがドロボウに駆け出す。

 ………あ、そうか。

 なんか今不思議な感じがしたんだが何でか分かった。
アシストする側とアシストされる側が逆……もといポーレウスがおいしいトコ1人占めしてるからか。
 あ〜なるほどなるほど。











「やっぱやめてぇーー!!!!」



 こんな話があってたまるか!
 このダメ警官ポーレウスの尻拭いをするだけして、手柄は全部アイツが持ってくのかよ!!
 やってられねー!!

「さ、捕まえましたし行きましょう」

「ああああ!! お前もしれっと自分のやったことみたいな顔してんじゃねぇよ!! せめて感謝の言葉
くらい言えないのか!?」

「アリガトウゴザイマス」

「どういう立場でその言葉が棒読みにできるんだよ!!」

 それとも何か!? 俺の方がおかしいのか!! いっそ、その方が楽だけどさ!!
 これから1年この調子だなんて……い、嫌だーーーーー!!

「さぁ早く行きますよ。何をしてるんですか?」

俺よりダメなくせにほざくなエセエリート!!

 怒りと理不尽を混ぜ合わせた回し蹴りがポーレウスの額に命中した。
 誰か教えてくれ! 俺がおかしいのか!?


NEXT
TOPへ