ギリギリで避けても枝分かれした攻撃を喰らってしまうことになるので、飛び退くようにして少し距離
を空けながら回避して水の鞭に銃弾を2発撃ち込む。
 1発だけでは取り込まれるだけだったソレは、その衝撃で千切れ飛ぶ。
 千切れた水の鞭は、まるで今自分が水だと思い出したようにぱしゃっ、と地面に落ちて広がった。
 それを横目で眺めながらNo:11に向かって駆け出す。
 距離はそれほどない。
 そのまま一気に距離を詰め、ないで、駆け出した身体にかなり無理矢理にブレーキをかけながら、肘を
曲げて背後に2回発砲する。

「く!」

 背後からNo:12の声と銃弾の命中した衝撃音とを聞いて、蹴りかかって来たNo:12のブーツに銃弾が当たった
んだと確認し、急ブレーキで止まった身体を止めたとき以上に無理矢理動かす。
 その間に、千切れて一瞬だけ動きを止めていた水の鞭はそんなこと問題にしないとばかりに千切れて無くなった分を
千切れた先から増やして伸ばし、俺を吹き飛ばそうと横薙ぎに振るわれた。
 それを無理矢理動かして腰を曲げて低くしていた身体でギリギリ避ける。
 まだ肘が曲げられたままの、その体勢から、No:12に向けて1回発砲。

 適当に狙ったとはいえNo:12のどこかに命中するだろう銃弾をNo:11は水の鞭で防ぐハズだ。
 それこそ枝分かれで俺を攻撃することを放棄して。
 だから、この一瞬。
 No:11との距離をできる限り無くして近距離からの1発を撃てば、さすがに水の鞭でも防御できずに一撃を与える
ことができる――――ハズだ。

 きつい体勢から駆け出す。
 だが、踏み出した足は綺麗に滑る。
 身体が傾く。

 は? ちょ、待て待て待て本気かよ? ちょっと洒落にならないだろう? こんな肝心な場面でそんな―――――

「が………はっ!」

 横薙ぎに振り返された水の鞭が傾いて無防備な身体に直撃して、またみっともなく吹き飛ばされた。
 呼吸が止まっていたおかげか、地面を転がる身体は痛みを感じない。
 でも、それも身体が止まって息を吸った途端に一気に襲い掛かってきた。
 身体は…まだ何とか動くけど、今の攻防でどうにかできなかったのは辛い。

 とにかくゆっくりと動いて膝を折った状態で起き上がると、そこには悠然と立っているNo:11がいる。

「もしあなたが本調子だったなら、私は今ので致命傷を貰っていたかもしれませんね。ですけどこれで終わりです」

「………さすがに、そうはいかねぇ、とか言える状態じゃないな」

「ええ。最後に何か言い残すことはありますか? 一応聞いておきますが」

「そうだ――なっ!!」

 考えるフリをして不意打ちの1発。
 が、No:11は予想していたと言わんばかりに綺麗に水の鞭を振るって銃弾を防いだ。

「変わった遺言ですね。それでは―――――さようなら、カリム=ウォーレン」

 腕が振るわれ、水の鞭が迫る。
 それを避けようと身体を動かすが、それよりも前に水の鞭は襲い掛かってきて、


 突如降ってきた何かが水の鞭を阻んだ。


「何だ? ………突撃槍?」

 勢いよく地面に突き刺さり水の鞭を防いだ何かは、疑いようも無く突撃槍だ。
 何でそんなもんが空から――――って、

「は?」

 空を見上げて声が自然と漏れる。
 見上げた先に見つけたそれを確認する間もなく、それは地面に着地した。





 瞬間―――まるで火薬を爆発させたような衝撃音と土煙に飲み込まれる。





 土が眼に入らないように眼を瞑って土煙が晴れるのを待つ。
 その最中にNo:11と12の驚きの声も聞こえたような気がする。
 ということは、相手にとっても予想外の事態らしい。
 そりゃあいきなり突撃槍が降ってくるなんて誰も予想してないだろう。
 一体何がどうなってるんだ?

 だんだんと土煙は晴れていき空を見上げたときに見つけたそれが姿を現す。

「はぁ?」

 今度は意図的に声を出す。
 突撃槍が降ってくる時点で予想外もいいとこだっていうのに、土煙から現れたそれはもっと予想外だった。
 地面に着地する前に見たときも信じられなかったが、こうしてそれを眼の前にしてもやっぱり信じることが
できない。



 フルプレートが空から降ってきた。



 全身をくまなく覆う銀の鎧。
 手入れはきちんとされているのだろうが、長年使い続けられているのか所々に傷が見える。
 俺もNo:の2人も黙って見守る中、そのフルプレートは赤いマントははためかせて立ち上がり、周囲を見回した
後、俺を見て渋い声を発した。

「貴殿がカリム=ウォーレンだな?」

 うわぁ、俺っていつの間に人気者になったんだろうー。
 っていうか…ええええええ!!! フルプレートに怨まれる覚えは無いぞー!!?


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