「製作者?」

「そーよー。だからこの銃は私のー」

 とりあえず向こうの言い分は分かった、というか至極まっとうな事を言ってるわけだ。
 職人だ製作者だとか言うのが嘘の可能性もあるが…そんな嘘言う奴が俺の名前を知ってたりしない
だろうからたぶん本当なんだろう。

「ってことは、やっぱディスウィリウムの人間か?」

「あむあむ」

「……っおいっ!!」

「はむはむ?」

何度やろうがときめかねぇから質問に答えろ!!

「む〜………一応組織の関係者にはなるけどー?」

 ナリアナが拗ねながら答える。
 拗ねたいのはむしろ俺だ。
 が、今は拗ねてる場合じゃあない。

「だったら何で俺を呑気に寝かせておいた挙句に、飯まで食わせる?」

「んー、私のため、かなー。あとこの銃のため?」

「…実に分かりやすいことで」

 まぁそういうのは嫌いじゃないけど。

「銃に関しては後で話し合うとして、私のためってのは? 俺を何かに使うつもりか?」

「というか聞きたいことが、あったんだけどー」

 そう言いながら耳を貸せ、とばかりに小さく手を振るナリアナ。
 とりあえず少し腰を浮かせてナリアナに顔を近づける。

ガン!!

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!」

 さっきと同じ箇所を同じ得物で、でも力だけは強くして殴られた………!!

「てめっ…! どういうつもりだ――!!」

「どうもこうもないー。久しぶりに私の作品に再会したと思えば雑な調整しかしてないじゃないのよー。
それに所々の部品が軍の銃の部品になってるしー」

「しょうがねぇだろ、裏ルートで入手できる銃の部品なんてそれくらいしかないんだから……!」

「もう少し大切に扱いなさいよねー」

 そう言う本人が銃で人を殴るのはいいのかよ、とは言わないでおく。
 また同じ場所を殴られるのはゴメンだ。
 マジで痛いし。

「ああ、悪かった悪かった。で? 聞きたいことってのは?」

 ちょっぴり出てきた涙を拭いながら聞く。
 ナリアナは少しだけ考える仕草をしてから答えてきた。

「ディスウィリウムからうまく逃げる方法―――――かなー」

 その答えに疑問符がいっぱい出てきた。

◇◇----------------------------------------------------------◇◇

「ふん、ふふふんふ、ふふーん♪」

「任務中よNo:12。静かになさい」

 静かに隣を歩くNo:12に告げると、不貞腐れながら返事を返してきた。
 前から思っているが、この子の悪いところだ。

「No:12。前から言ってるけど任務中は――――」

「ちゃんと集中しなさい、だろ? 分かってるって。でもさ、今回はしょうがないじゃんか! だって
すっげぇおもしろそうな任務なんだしさー!」

「――――はぁ」

 しょうがないなどと言っている時点で集中できてなんかいないと言うのにどうしたら気づいてくれるのか。
 いや、正直に言うならこの子に任務だとかいう感覚など理解できていないことは理解してはいる。
 いくら任務を数回こなしているとはいえ、10歳の男の子にそんな感覚など無いだろう。
 この子の中で任務というのは『楽しいコト』でしかないに違いない。
 だからこの子はどれだけ楽しそうかでやる気が左右されている。
 その点で言えば今回の任務は充分やる気みたいだ。

『カリム=ウォーレンの捕縛ないしは殺害』

 今回の任務。
 緊急の任務だそうだけど、ずいぶんな任務だわ。
 カリム=ウォーレンと言えば銃の戦闘でNo:1と互角だったって噂の人物。
 恐らくNo:12のやる気もその辺りが理由なのだろうけど。
 それは、いい。
 無茶苦茶なことだろうとも任務と言われればやるのが私たちなのだから。
 ――――――と。
 いけない、この子に集中しろと言った私が集中していない。
 今この瞬間にだってカリム=ウォーレンと遭遇するかもしれないのに。

 報告では川に落ちたとのことだから、その地点から下流へ川に沿って歩いている。
 川の流れは弱くないし、途中に引っかかりそうな障害物も無い。
 この様子だと下流まで流されている可能性が高い。

 かといってその途中を気を抜いているわけにもいかない。
 水死体になっていてくれれば一番楽だけど、どのみち下流までは足を運ぶ事になるだろう。
 下流のナリアナ氏の工房には連絡してあるから運が良ければ見つけてくれている。
 だから私たちは道中しっかりと―――――

「ふん、ふんふーふふ、ふん〜♪」

「―――――No:12」

 またよく分からないリズムを口ずさみ始めたNo:12の頭を軽く叩く。
 この様子だと今日だけで何回この子を注意することになるのか。
 いざと言う時油断に繋がらなければいいのだけれど。
 肩を落として、でもため息をつくのは何とか抑えた。

 その分私がしっかりしてないとね。

 周囲に気を配りつつ私たちは足を進めた。


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