「っ―――!? 幻想の盾ヴィジョン・シールド!!」

 もう少しというところで半透明の盾に剣が防がれる。
 後ろに跳んで距離を取った。

「まサカ、宝があるかないかだけでこうまで違うナンテネ――――」

「ああ、とても重いぞ」

「そうカ。そうだろうネ。速度が全然違ウ」

「そうでもないが」

「謙遜することはナイ。僕でもギリギリで反応するほどなんだから相当のものダヨ」

「ふむ。そういえば初めて聞いたな」

「?」

「お前が叫ぶのは」

 その言葉を言った途端奴の表情が変わった。
 俺と戦っている間僅かに笑っていた口元が引き締まる。

「君を過小評価しすぎたヨウダ。今訂正しておくヨ、君は強イ」

「そうだとも」

「謙遜の次は自信満々とキタカ………君はおもしろいナ」

「知り合いは何故かよく怒るが」

「そウカ――――――幻想の鎖ヴィジョン・チェーン

 右腕に鎖が巻きつくよりも前に駆け出す。
 走った勢いを剣に乗せ、振るう。

幻想の刃ヴィジョン・エッジ!」

 奴がしゃがんで剣を避ける。
 同時に半透明な刃が襲ってきたのでそれを避ける。
 それでまた距離が開いた。
 シーラのこともあるからこれ以上時間をかけるわけにはいかない。
 次で決める。

「仕掛けてくルカ? いいだろウ、僕も早く済ませないといけないシネ」

 そしてお互い、構える。
 俺は、いつでも走り出せるように。
 奴は相変わらず右手を顔の辺りまで上げている。
 待つ時間は無かった。
 一気に加速する。

幻想の盾ヴィジョン・シールド

 奴の眼の前に半透明の盾が現れる。
 かまわず加速の勢いと、腰の捻りで剣を振り下ろす。

「無駄………ダ!?」

 振り下ろされた剣は半透明の盾ごと奴の左肩を斬った。


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 幻想の盾と一緒に左肩を斬らレタ。
 少し深い傷ダ。
 だガ、傷などどうでもイイ。
 問題はあの魔剣が僕の盾を斬ったというコトダ。
 両手を使っていても斬れなかったもノガ、片手に加速と腰の捻りを加えたところで斬れるわけがナイ。
 じゃあ何故斬られル?
 彼自身に変化はナイ、むしろ悪くなっタ。
 ならバ、魔剣に何らかの変化があったというこトカ。
 だガ、外見に変化は見らレナイ。
 もしも変化があったナラ――――――斬れ味ダロウ。
 しかシ、急にどうしテ?
 一体魔剣の力になるような要因がどこにあっタ?
 この街はいたって普通の街ダ。
 特別な研究機関も無けレバ、鉱山などがあるわけでもナイ。
 それに今この街にいるノハ、僕と彼ニ、彼の仲間とそれを追う僕のパートナー、そして僕らの手下だけダ。
 いヤ………そうカ、そういうこトカ。
 だとすレバ、本当に優位な立場にいるのは彼ではナイカ。

「これハ、まいったナ……」

 長引けば出血多量で彼が倒れるだろうガ、僕もその間に腕が無くなることくらいは覚悟しないといけナイ。
 あまり好ましい状況じゃないナ、こレハ。

「仕方なイナ。今日のところは僕の負けを認めヨウ、退かせてもらうヨ」




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