「いったい何なのよーーーー!!」

 あの後のんびりと歩いてたら黒服の男たちが次から次へと追いかけてきた。

「この剣にそれほどの価値があるのか……?」

「そんなことどうでもいいわよ!! 後ろから来てるの何とかしなさいよ!!」

「いや、彼らは俺たちをどこかへ誘導しようとしているみたいだ。だからあえて手を出していない」

「そんなのいいわけないでしょ!!」

「しかし後ろの連中を倒しにいけば、お前がその間に隠れているかもしれない他の仲間にやられるかも
しれないぞ?」

「守りながら戦うのーーーーーー!!!」

「むぅ……それは難しい。それに―――――」

「それに?」

「どうやら目的地に到着したようだ」

「へ? ――――――って、あ」

 街の路上。
 私たちの前方に2人の人影が見えた。
 1人はスーツを着た、片目は閉じられもう片方は義眼――それも普通の眼球よりも大きな――をした男。
 もう1人は上下とも黒を基調とした服装の黒い長髪の女。

「シーラ、逃げろ」

「だから言われなくてもそうするって言ってるでしょ」

 いつの間にか黒服の男たちがいなくなっていた後ろの方へと逃げ出す。
 あんなヤバそうな連中まで出てくるなんてどういうことよ!?
 ああ、もうわけがわかんない! けど―――――

「お宝換金するまでは絶対死ぬんじゃないわよ!!」

 それだけ告げて私はさっさと逃げ出した。


◇◇----------------------------------------------------------◇◇


「逃げたのは私が追うわ」

「了解しタ。だがくれぐれも無理はしないことダヨ。ああいう普通の人間ほど、僕たちみたいなのは注意 
しなければならないんダカラ」

「それは心配してくれているのかしら?」

「心配しないのなら僕たちはパートナーとは言わないはずダ」

「冗談よ。あなたこそ気をつけてね」

「あア」

 2人が会話を終えて、女の方が歩き出す。

「行かせない」

 女の手前まで踏み込み、大剣を振り下ろす。

――――手ごたえは無く、女の姿は消えていた。

「無駄ダヨ。そんなことをするよりも僕をさっさと倒してしまうことを考えた方がイイ」

 その、大きな義眼でジロリと睨んで男はそう言った。
 余裕か、虚勢か―――――――考えるまでもなく前者だ。

「フフ、実力を読むということはできるみたいダネ。それに本音を言えばあそこで仲間を逃がしたのは
賢明な判断ダ。仲間の逃げ足の速さはそれほどのようだがネ」

「お喋りをする気はない」

「まァ落ち着きなヨ。彼女もあれで人を見下す所があるからネ、そう簡単に仲間が死ぬことはナイヨ。
それよりもダ、君はこの街をどう思ウ? 家が建ち並び、きちんと整備された道に路上市場。ごくごく
普通の街ダ」

「俺もそう思う」

「今現在この世界には3つの大陸が存在シ、各大陸に無数の街や村、国が存在していル。この街もそのうち
の1つなわけダ。他の大陸の人間からすれば名も知らない街でしかナイ」

「それがどうした?」

「ああ、ダカラ――――――――こんな街の1つが潰れようがどうということではない、ということダヨ。
まったく、君にすら勝てないというから不安だったケド、彼らも人払いくらいはできるらしいネ」

「人払いだと?」

 聞くな、聞かなくてももう気がついている。
 さっきから周囲に漂う空気でそんなことはとっくに分かっている。

「そウ。本当は説得して出て行ってもらうつもりだったンダ。だけど時間が無かったのと、街の人間が
説得を聞いてくれなかったからネ、少々手荒くなっタ」

 手荒くなったというのはつまり、さっきから気がついているもののことか。

「まったく、困ったものダヨ。知っているカイ? 皆殺しっていうのは結構難しいんダヨ」

「き――――――さま」

「おかげで血の臭いが街中に漂ってしまっタ」

 さっきから周囲に漂う、血の臭いを含んだ空気が濃くなった気がした。
 この男は――――――!!

「狙いは俺の剣だろう。何故こんな真似をした?」

「それハ、君には関係あるマイ。それよりも今さらながら用件を言おウ。大人しくその剣を渡セ。
そうすれば君と仲間の命は保証するヨ。もっとも――――――その顔デハ、いい返事はもらえそうに
ないネ」

「分かっているのならさっさと始めよう。早くアイツを助けに行かねばならない」

 もちろんお前も許す気はない。
 実力の差があろうともだ。

「ハはハ、実力差を認めてなお挑めるのは勇気だガ、それを理性で抑えられないのであレバ、それはただの
無謀でしかなくなるんダヨ?」

 それがどうした。
 貴様は倒す。

「ふゥ、いいダロウ。そこまでの決意ナラバ、ディスウィリウム特殊部隊"ソールド"がNo:3、"幻想"が
相手にナロウ」


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