「どうやら順調なようだネ」
話しかけられ側の男に視線を向ける。
紫色の髪に黒のスーツを着た男。
パートナーとも言える男、ディスウイリウム特殊部隊"ソールド"のNo:3、ネイム=フリトヴァ。
「それはどうかしらね。第1隊は全滅だそうよ。何でも阿鼻叫喚の世界を見たんだとか」
「ほウ、訓練生ならいざしらず一般兵レベルを倒せるとハ。これは少し考えを改めねばなるまいネ」
「そうね。とりあえず私たちが出るのは避けられないでしょう。問題は場所ね。街中でやるか外にするか」
「それハ――――街中のほうがいいダロウ」
「根拠は?」
「僕もそうだが、君も街中の方が都合がいいだロウ? 分かってて聞くのは嫌だヨ」
「―――――ふぅ。となると街中の人払いをしないといけないわね」
「連れて来た隊は幾つダイ?」
「5つ。で、今しがた1つやられたから4つ」
「なら3つを目標の誘導ニ、残りは人払いでいいんじゃないカナ」
「ええ。さっきそう指示したわ」
「…………………さすがだネ」
「呑気なこと言ってる場合じゃないわよ。私たちもポイントに向かわないと」
「あア」
それで会話は止まり、私とネイムは歩き出す。
「なるほど、奴の手駒も捨てたものではないらしいな」
「!?」
声は私たちの真横からだった。
そしてその場所にはネイルとは違い茶色のスーツに身を包んだ男がいた。
声がするまで気がつかなかった……。
ネイルの顔を見ると、彼も小さく顔を横に振った。
つまり私たちのどちらともが気がつかなかったということだ。
自然に身体が戦闘態勢をとった。
「ああ、そんなに身構えることはない。私は君たちの敵ではないよ」
「じゃあ何者?」
「残念だが名乗る事はできない。ただ言えるのは私はティウル=アンバークルと同士であるということだ」
「隊長と?」
男は無言で頷く。
「悪いケド、どうやってソレを信じろト?」
「正論だが、こればっかりは信じてもらわざるしかないね」
「わかっタ、そちらが手を出してこない限りハ信じておくとしよウ。そして信じるから僕たちは行かせてもらうヨ。
時間がおしているンダ」
「ああ、構わんよ。元々君らに気づかれるつもりは無かったからね」
「それじゃ行こうカ」
「ええ」
背後には注意しつつ、歩みを再開する。
「ああ、そうそう1つだけ忠告しておくよ」
「何?」
「君らが回収しようとしている魔剣――――――侮らないことだ」
!! ―――――――あの男は私たちの目的まで知っている!?
慌てて振り返ると、男の姿はもう無かった。
「ふム、どうやら隊長と同士と言うのはあながち嘘でもないようダ」
「そうね。今回のことは私たちと隊長しか知らないんだから」
「まァ、気にしない方がイイ。今は仕事の方が優先されるべき事だからネ」
「わかってるわよ。急ぎましょう」
そうして私たちは街の中へと入っていった。
◇◇----------------------------------------------------------◇◇
「ティウルの手駒の実力は充分。後は魔剣の使い手の実力次第か」
//―――――何をしているんだ?―――――//
頭に直接声が響く。
何度体験しても慣れるものではないな――――スラケンスはよく平気でいられるものだ。
「レイスか。なに…ティウルの手駒を1度この眼で見ておきたくてね」
//―――――それで、どうだった?―――――//
「手駒としては充分だな。問題点を1つ言うとするならば彼らはまだ若いということだ」
//―――――それは経験が足りないということかい?―――――//
「そのようなものだ。戦闘経験は充分だろうが予想外の事態への対応は充分ではないだろう」
//―――――予想外の事態が起きると?―――――//
「さあね。だが相手は魔剣だからな。何があってもおかしくない。だから私はこのまま様子を見ることに
するよ」
//―――――わかった。本当は仕事を頼みたかったが別の者に頼もう―――――//
「すまないな」
//―――――僕もこの件には興味があるからね。女神に報告した後にでも詳しい話を聞かせてくれ―――――//
「わかった」
返事はない。
もう行ったのだろう。
「さて――――――結果はどうなるかな?」
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