「……むぅ」
「何よいきなり変な唸り声出して」
「いや、1つ聞きたいんだが、最近何か怨まれるような事をした覚えがあるか?」
「―――――は?」
何なのよいきなり。
わけが分からないけども、怨まれるような事……ねぇ〜
「同じ協会の人間ならあるかもしれないけど、それ以外では特に思いつかないけど?」
「そうか。いや、俺もそうだが。うむ」
だから一体何なのよ!?
私の視線に気がついたというわけでもなく。
1人で結論に達したデニスがこっちを向いた。
「尾行されている。それも複数人に」
「―――――――――――はぁ?」
「気のせいかと思っていたんだがどうやらそうでもないようだ、走ろう」
「ちょ…ちょっと!」
いきなり走り出すデニスを追いかけるように走り出す。
て…本当に誰か追いかけてきてる!?
「シーラ。もう少し早く走れ。でないと追いつかれる」
あんたとは体力が違うんだから無茶言うな!
これでもけっこう本気で走ってるんだから!!
「む、止まれシーラ」
「ぐぇ」
いきなり襟首を掴んで止められた。
走れっていったり、止まれって言ったり何なのよ〜
「動くな」
言うと同時襟首を掴まれ地面に座り込んでしまった私の頭の上を何かが通り過ぎる音。
次いで黒服の誰かが地面を転がっていくのが見えた。
「な、何?」
「建物の屋上からこちらめがけて落ちてきたので吹き飛ばした」
見ればデニスの手には愛剣でもある漆黒の大剣が握られていた。
って、一歩間違えば私の首が飛んでたんじゃないの……?
「あ、あんた何考えてんのよ!!」
「最善かつ適切な判断をしたつもりなんだが」
「私の首を天秤にかけるような判断するな!!」
「だが、あの場合はだな――――いや、それより」
「そろそろいいかいお2人さん」
「え?」
振り向くとそこには先程吹き飛ばされた人と同じ黒服の怖そうなお兄さんが4人。
これって、つまり―――――
「怒鳴ったりしているから追いつかれたぞ」
「………やっぱり、そう?」
「まぁ追いつかれたのなら仕方ないだろう。気にするな。で、お前たち、何で俺たちを追いかけるんだ?」
「細かい事はどうでもいい。大人しくその剣を渡せ」
と、デニスの大剣を見る黒服の男たち。
当のデニスは何やら考えるような顔をしてみて、口を開いた。
「俺の作った特製ジャムではダメか?」
「言い訳ねぇだろうが!!」
「むぅ…ダメか。では最近作った薬草パンは?」
「どれもいらねぇよ!! とっととその剣を渡せ!!」
「断られてしまった」
と私の方を見るデニス。
急に私に話しかけられても。
「困った」
「ならそれらしい顔しなさいよ。全然無表情じゃない」
「……すごく困った」
「いや同じなんだけど」
「ううむ」
「何コソコソ話してやがるんだ!!」
ナイフを片手にじりじりとにじり寄って来る黒服の男たち。
これは本気だ、やばいかも。
ええい、こうなったら――――――
「やっちゃいなさいデニス。何かもうボコボコっていうか阿鼻叫喚の世界に辿り着かせるくらいに」
言いながらビシッと黒服の男を指差すと場が静まりかえった。
「いいのか?」
「いいのよ。っていうかあんたのせいで私まで危険な目に合うんだからあんたが責任とるのが普通でしょ。
あ、残りの宝を換金するまで死なないでよ」
あんな重たい物持つなんて嫌なんだから。
デニスは私の言葉を聞くこと数秒。
「確かにその通りだ。責任はとろう」
そう呟いて漆黒の大剣を構えなおした。
さ、今のうちに逃げよう。
デニスに背を向けて走り出す。
それに続くように黒服の男たちの声が聞こえてきた。
それにも振り返らず走る続ける。
充分離れてから立ち止まり、息を整える。
「ここまで来ればまぁ大丈夫でしょう」
「うむ、そうだな」
―――――――っ!!!
デニス!? いつの間に!!
「黒服の男は!?」
「倒した。そして君の後を追いかけた」
「もう?」
「ああ。ちゃんと阿鼻叫喚の世界に送ってきた」
「ならよし。じゃ行きましょう」
「ああ」
「でもあいつら何でその剣を狙ったのかしらね」
「この剣も一応元は遺跡にあったものだからそれなりの価値はある。それでではないか?」
「そんな感じじゃなかったけど…ま、いいか」
狙われるのは私じゃないんだし。
いざとなればさっきみたいに1人で逃げればいいし。
デニスもけっこう強いから簡単に負けはしないでしょう。
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