白い白い、その色だけしか存在しない建物の通路を歩く。
 この建物が白いのは酔狂ではない。
 警告なのである。
 白とは純粋な色だ。
 他のどの色とも簡単に交わる。
 なにも、純粋無垢であれと言っているわけではないが、そういうことなのだ。

 他人の念と混ざって自分を劣らせるようなことをするな、ということだ。

 と……まぁそれは私個人の勝手な考えだったりするのだが。

「よぉ、派手にやったらしいな"現象具現者"さん」

「"アルケミスト"―――――スラケンスか」

 いつの間にか側まで来ていた男にそう返す。

「だから俺は"同化"だっての」

「それは君がそれにしか能力を使わんからだろう。だが、君の能力は物質を他の物質へと変換する
"錬金術"だ。故に―――――」

「ああ! わかった、わかってます。わかってますとも。だからその話は置いといてだ、な。お前
何も街1つ消すことはないだろ」

「魔剣は地中深くに落ちた。街1つを消すだけの結果はだしたつもりだが」

「そういうこと言ってんじゃねぇって。もう少しやり方ってのがあるだろう」

「住民は皆殺しにされていたんだ。墓を作ってやらねばいけないだろう?」

「地面は沈むは、盛り上るはで建物なんてもの無くなっちまうようにするのがあんたの言う墓かよ」

「そうだ。そもそも墓とは何のためにある? 死者がいたという証を残すためだろう。ならばあれも
立派な墓さ」

「そう言いきれるあんたが怖いねぇ……っとと…」

 突然スラケンスがバランスを崩してふらつく。
 そういえば彼は最近両足が義足になったのだったか。

「足の調子はどうなんだい?」

「最悪さ。いくら精巧なもんだっつてもやっぱ本物じゃないとどうも…ね」

「君の能力でもどうにもならんのだろう?」

「ああ、創ったそばから崩れやがる。この義足だって奴のじゃなけりゃ崩れてるだろうよ」

「そうか、大変だな」

「まったくだ」

「では私は女神に報告があるので失礼するよ。後で話を聞かせないといけない者もいるからね」

「ああ、じゃあな」

 そう言ってスラケンスと別れ、私は歩き続ける。
 距離にしたら短いその場所の手前まで歩き、そこで足を止める。
 深呼吸をしてから足を踏み入れる。
 他の場所と何も変わらない白い白い部屋。
 その部屋のやはり白い祭壇。
 そこにいる女神よりもやや離れた位置で立ち止まる。
 そして喋ろうとし、誰かがやって来る気配を感じた。
 部屋の入り口を見ていると見知った顔がやって来た。
 ティウル=アンバークル。
 スラケンスが1度外で会った時の様子を話していたが、まさにその通りだ。
 しばらく見ない間にずいぶんと疲れている顔をしている。
 今はどちらかといえば緊張しているようでもあるが。
 女神はそんな彼に少し言葉をかけ、彼が少々落ち着いてきたのを見て告げた。

「わかりました。では各々、途中報告をしてください」

 その声はよく部屋に響いた。


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