「この後どうするの?」

「とりあえず隊長に報告しに戻るしかないネ。まァ、隊長も『僅かにでも退かないといけないと判断した
なら迷わず退け』って言ってたから問題ないダロウ」

「そう」

 そう言ってNo:2は口を閉じタ。
 何でもなさそうな顔をしてはいるガ、内心ほとんど何もせずに退く事が悔しいのだロウ。
 後で何もなければいいケド……

「それハ、さてオキ………そろそろ出てきてもいいんじゃないカイ?」

「No:3…?」

「ばれてはいないつもりだったのだがね」

 建物の影から一人の男が僕たちの前に姿を見せル。
 街に入る前に僕たちに話しかけてきタ、隊長の同士だというあの男ダ。

「No:2は気がついていなかったサ」

「では、どうして君は?」

幻想の眼ヴィジョン・アイ

「なるほど。君の右目が閉じたままなのは、能力による擬似視覚を使うためか」

 男は後ろにある半透明な眼球を見て呟いタ。

「それデ、見学しているだけだったはずの人間がどうしてここニ?」

「…なに、本当は見学だけで済まそうと思っていたのだがね。魔剣の使い手を殺すいい機会があったので
つい…ね」

「ほウ?」

「それでなくても魔剣は今少しだが力を得てしまっている。今の内に誰の手にも届かぬようにするのが
一番だ」

「あなたにそれができるト?」

「善処はするさ。そんなわけで君たちに忠告だ。今から5分以内に街からある程度離れていてくれたまえ」

 そうして男は歩いていっタ。

「さぁ行こうカ、No:2。あまり時間は無いらシイ」

「ええ。でも、あの男そこまでの実力者なのかしら」

「隊長と同士と言うくらいダ、侮れないだろうネ」

「どちらにせよ、仕事さえ片付けばどうでもいいけれども」

「そうだネ………でも彼は死なないサ」

「珍しいわね。あなたがそんなこと言うなんて」

「別にどうというわけではないんだケドネ――――――約束したノサ」

「約束?」

 そウ、約束。
 名前を教える事での彼との約束ともう1ツ。
 彼は必ず僕が殺すという約束。

「彼も約束が1度でも果たされないうちに死にはしなイ。ただそれだけダヨ」

「そう」


◇◇----------------------------------------------------------◇◇


「怪我が酷くなった気がする」

「気のせいよ。誰が何て言っても気のせい」

「さっきまでは左指は折れてなかった気がするんだが」

「そう? 勘違いでもしてるんじゃない?」

「口の中も切れてる」

「知ってる? 痛いと思うから痛いの。痛くないと思えば痛くなくなるわ」

「む……いや、痛いぞ」

「そうでしょうね。嘘だもの」

「そうか」

「ええ」

「なにやら賑やかだね」

 無人になったはずの街に自分たち以外の人間が現れた。
 長い金髪のまるで貴族のような男。
 その男は温和そうに、でも笑いもせずにいた。

「誰だ? あいつらの仲間というわけではないな?」

「そうだ。詳しくは省くが女神という方に仕えている者だ」

「それで、お前もこの剣を渡せとかいうのか?」

「いや結構。君とその魔剣にはこの街もろとも消えてもらう」

「何?」

「説明は無しだ。さっそく消えてくれ」

 男がそう言うと、地響きがするのがわかった。
 初めは僅かなものだったが、次第に明らかなくらいに大きいものになる。

「な、次は何なんのよ!」

「地震? 何だ、何を…した?」

「さらばだ。無残にも殺された哀れな者達の魂と共に死ぬがいい」

「きゃっ!!」

 地震の大きさに立つことも難しくなる。
 周囲の建物の壁も崩れだしていた。

「シーラ。大丈夫か?」

「大丈夫じゃない! もぉ〜どうなってんのよぉ〜!!」

「落ち着け。早く安全な場所に行くぞ」

「動けないわよ!!」

 地震はさらに酷くなっていく。
 だというのに今現れた男は平然と歩いて立ち去ろうとしていた。
 近くの建物が崩れていく。
 地面もあちこち割れていく。
 そして土煙舞う中、男は振り返り、告げた。

「やはりただ死に逝くのもまた哀れだ。せめて私の2つ名だけでも刻んでおくといい。私は、私の2つ名は
"現象具現者"。では」

「く……待て…っ」

 男を追おうとして、一際大きい地響きと、そして音。
 視界は土煙に覆われ、身体は立てないまま地面に座り込んでいる。
 頭上から崩れた建物が降ってきて、視界を埋め尽くした。


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