「くうっ……!!」

 体があちこち痛い。
 じわじわと追い詰められている。

パンッ

 そして乾いた銃声。
 それと同時右肩に走る痛み。
 これで左の太もも、両肩、腹部の四ヵ所が傷ついた。
 手を傷ついたところへ動かす――――

パンッ

「――――――――っ!?」

 その瞬間に手の甲を撃たれた。

「君は回復系統の魔法を得意とするからな、気をつけねば」

 先生の酷く冷徹な声。
 だから―――――――

「どうして……?」

「君が知る必要はないし、知っても無意味だ、もう死ぬ」

 そう言って私の心臓に銃の狙いが定まる。

 死にたくない。

 せっかくカームとまた会うことができたのに

 死にたくない。

 だって私はまだカームに言いたいことを何も言ってない

 死にたくない。

 もっとカームと一緒にいたい


 ――――――死にたくない


「ファムッ!!」

「え…」

 先生の後ろ。
 そこに肩で息をしているカームがいた。

「カ――――――――」

 呼びかけようとして
そこで私の意識は途絶えた。

 意識の無くなる直前に見たのはカームの驚いたような顔

 意識の無くなる直前に聞いたのは耳に響く乾いた銃声

 私ことファム=レイグナーが死ぬ間際に得たのはそれだけだった。

◇◇-------------------------------------------------------------------------◇◇

 撃たれた。

 ファムが撃たれた。

 撃たれたのは心臓――――――つまり即死

 即死

 もう動かない

 もう笑わない

 もう悲しまない

 全てを失った。

 それだけを理解するのに1秒だって経ってはいない。
 なのにまるで1時間は経っている気がした。

「お前…何をした?」

 やっとの思いでそれだけを搾り出すように呟く。

 当のファムを撃ち殺した先生は特にどうというわけでもなく答えた。

「見ての通りだ、No:9 ファム=レイグナーを撃った」

 まるで当たり前のことをしたかのような口調

 それで僅かに残っていた理性が無くなり

抑えていた衝動が破裂した。

てめえっ!!!?

 ただ眼の前の人間を殺すことだけを考え駆け出す。
 奴との距離はほんの少し。
 その差が無くなる前に奴が銃を構える。
 だが無駄。
 その前にこちらが構えた銃の引き金が引かれている。

 乾いた銃声

 殺った。
 そう確信した――――――――のに
倒れていたのは俺だった。

「な…っ」

「今どう説明しようが聞く耳もつまい。しばらく動けないようにした」

 言葉どおり体はピクリとも動かない。
 眼の前に今死んだばかりのファムがいるというのに
 俺の体はまったく言うことを聞かない。

「くそっ………たれぇっ…………!!」

 呪詛のように呟くが効果なんてない。

 このときほど―――――――

 自分の力の無さを悔やむ事はない。

 俺は何て――――――バカなんだ。

 勝手にココを出てあいつを泣かせて。

 ずっと落ち込ませてたのに

 何もしてやれないまま死なせるなんて――――

俺は何てバカだ


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