「変だな」
「ああ」
盗賊団を壊滅させたのはいいのだが――――――
「弱すぎる」
そう、弱い。
これならNoでなくとも警察機構や軍がやっても問題ないだろう。
「駄目。こいつら本当に弱いだけの盗賊みたい」
盗賊団にいろいろ吐かせようと拷問していたサリスがやってきた。
ハァ、とやや大袈裟なため息をつくと近くの岩に腰を下ろす。
盗賊団らしいアジトといえばそうであるこの天然洞窟
道が複雑なわけでもないし、横幅もそこそこあるから3人が並んで歩いても余裕がある。
ただ、そのぶん抜け道の数が多く相手の背後を簡単にとれるらしい。
俺たちも入ってしばらく歩いていると、知らぬ間に挟み撃ちにされてしまった。
が―――――――――さっきも言ったようにひたすら弱い。
あっさりと終わってしまった。
「これはさすがに変よねぇ」
サリスの何気ない一言
その一言で先生に対する違和感が膨らみ始める。
先生は確かに俺を騙そうとしている感じがあった。
今この状況で考えられるのはこれは時間稼ではないかということ。
それとアルとサリスも俺と同じく騙されているのではないかということだ。
もしそうだとして、では何のために時間を稼ぐ?
それも俺だけでなくアルやサリスまでもだ
俺たち3人に知られるとマズイものでもあるのか?
だがアルとサリスはともかく、俺はつい前にここに連れ戻されたばかりだ
俺たち3人に共通していることなんて――――――――
「………待てよ」
あった
ただ1つ
たった1つ
俺たちが共通して知っていることが
「カリム?」
「ちょっと、どうしたのよ?」
俺の顔色が悪いのだろうかアルとサリスが心配そうな声をかける。
特にアルは俺が二日酔いで苦しんでいると思っているのだろう
まるで自分のことのように心配している。
だけど酔いなんてさめてしまった。
そのまま踵を返し走り出す。
「ちょっ! カリム?!」
「何なのよ! いきなり!!」
2人の声が洞窟に響く。
だがそんなことも耳には入らない。
来た道を明確に、瞬時に思い出してできる限り早く洞窟を出る。
時刻は昼を過ぎてしばらく経ったあたり。
それだけ確認して走り続ける。
奴の、先生の狙いは―――――――
ファム
ファム=レイグナーだ。
「くそっ……!!」
昨日アルが変だと言った時に、3人が仕事をやると言われた時に気づければ―――――!!
ああ、でも今は急ぐのが先だ。
間に合えよ、俺!!
◇◇-----------------------------------------------------------------------◇◇
パンッ!!
乾いた音と共に銃弾が私に向かって飛んでくる。
それより先にわずかに体をずらして紙一重でそれを避ける。
やはりまだお酒が残っていてうまく動けない。
でも、それより…なんで――――
「私が殺されなくちゃいけないんです……?」
先生はそれには答えず私を見る眼を変えた。
それこそまるで仇の者を睨むかのような眼に
そして再び銃を構えた。
「くっ…!!」
この廊下が広めとはいえ、銃弾を避け続けるのには限度がある。
銃口の向きと先生の指の動きを見てもう1度放たれた銃弾を避ける。
銃を撃ってから次に銃を撃つまでに発生するタイムラグを逃さず、近くの廊下の角を曲がる。
「いくら酔っているといえどもやはりそう簡単には殺せないか、なぁNo:9?」
「ですから…! 何で私が? 理由を聞かせてください…?! 先生!!」
やはり先生は答えない。
そしてまた発砲。
キンッという音がして銃弾が手の甲をかすめた。
「え―――?!」
あわてて銃弾のきた方を見る。
そこには部屋のドアがあった。
「ドアのノブに弾を当てて……?!」
すぐにその場を離れる。
近くの曲がり角を曲がった瞬間銃弾が通り過ぎる。
お酒の酔いと今の行動とで熱くなった体を落ち着かせる。
「しまった」
その通路の先を見つめてそう呟く。
ただ真っ直ぐ伸びる一本道の通路。
そしてそこは倉庫に通じている。
つまり―――――――逃げ場がない、ということだ。
「なんで私が?」
いくら考えてもまったく理由が浮かんでこない。
そしてまた銃弾。
次は足をかすめた。
「な、どこから――――」
前を見る。
先ほどのようなドアはなく、ただ窓があるだけだ。
「まさか、窓と枠の境目に当てて……?」
そんなことカームだってできるかわかんないのに。
やっぱり先生ということだろうか。
でも、だから、何で―――――
「私が殺されなくちゃいけないんですか?! 先生!!」
やはり先生はその質問に答えはしなかった。
代わりに銃弾だけが私に届く。
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