「では話を始めるぞ」
「まってください先生」
とある部屋の中。
そこには先生と、先生に向かい合う形で俺とアルとサリスの3人がいる。
あれからいきなり話を始めるぞと呼ばれてこの部屋に来たら2人もいたのだ。
「何かね?」
「何でカリムもここにいるんですか?」
「私が呼んだからだ、もちろん君たちと同じ仕事をしてもらうためにだ。何か問題でもあるかねNo:6?」
「ですがカリムを参加させたら最高執行部がうるさいですよ」
「それについては私が黙らせる。他には?」
「いえ、特には」
「では始めるぞ―――――」
先生が何やら話し始める。
隣のアルを肘でつついて小声で話しかけた。
「サリスもNoになってたのか?」
「ああ、俺とほぼ同じ時期にな」
「何よ文句ある?」
とサリス。
やはり小声で会話に入ってくる。
「いや、そうだったのかぁって思っただけだけど」
「ま、苦労はしたけどね。適性検査とかもあったし」
「そーそー、おまけに魔具の扱いに慣れるのにも苦労したしな」
「へぇ…なんつうか、めんどくさそうだな」
「話を進めても構わんかね?」
少し苛立った感じを含めた先生の声が割って入る。
「「「どうぞ」」」
3人でハモる。
「久しぶりだから話がしたくなるのはわからんでもないがな、そういうのは後でゆっくりしろ」
そう言って再び先生が話し始めた。
「あ〜疲れた」
「お前あの程度で疲れたって…」
「ああいう空気は苦手なんだよ」
あれから先生の話も済んで、今はアルと廊下を歩いている。
今日はアルの部屋に泊まれとのことだからアルの部屋に向かっているわけだ。
サリスの部屋はアルとは離れているらしく、話を聞いたあとそのまま別れた。
「カリム、仕事の話どう思う?」
「さぁ。聞いてた限りでは変だとは思わなかったけど」
「そうか…そういえばお前よく大人しくしてるな」
「ま、な。それに先生から話を持ちかけてきたんだ」
「話?」
「そ、こっちの言う仕事をしてくれれば執行部のブラックリストから除名してやるってな。まさか
仕事があんなのだとは思ってなかったけど」
そう、そんな取引を持ちかけてくる仕事が盗賊団の壊滅だとは思わなかった。
てっきりもっとすごい仕事だとばかり思ってたのに。
「そう、それが変なんだよ」
「ん?」
変? 一体何がだ?
「だから盗賊団の壊滅にNoが2人とお前って組み合わせがさ」
「あ――――」
ああ、そういえば確かに変だ。
以前アルが恐らく不完全体であるリッチーの魔力を吸収していた時のことを思い浮かべる。
あれだけのことができる上に戦闘能力もズバ抜けて高いのだからよく考えればアル1人でも充分
やってのけることができるはずだ。
ふと先生が話を持ちかけてきたときに感じた違和感を思い出す。
やはりその話を聞いている時でもどこか俺を騙そうとしている感じがあった。
でも何なのかはわからないままだった。
「気にしすぎなのかもしれないが気をつけろよカリム」
「……ああ」
そしてアルの部屋に着くまではお互い無言のままだった。
アルの部屋の前まで来て部屋に入ると
「カーム〜!」
中からファムが突っ込んできた。
「あんたら遅いわよ〜!」
そしてサリスもひょっこりと出てくる。
俺はファムを受け止めながら驚いていたが、アルはもっと驚いていた。
「あの……鍵かかってたんスけど」
「まま、細かい事は気にしない」
そのままアルを部屋の中に連れ込むサリス。
ファムもそれにならって俺を部屋の中へと連れ込む。
「早く早く〜」
「わ、って、一体何なん…………だ」
中に入ってみるとそこは既に宴会でもやるかのようなことになっていた。
テーブルがあり、その上には鍋、そして一升瓶が3本。
だが床には空になった一升瓶が同じく3本。
そしてやたらテンションの高いサリスと、サリスに酒を飲まされているアル。
「あ、カリム! あんたも飲みなさいよ〜」
「いや、俺は…」
「私の酒は飲めないってゆ〜の?」
………逆らえそうにもない。
「ちょっと、サリス飲みすぎだよ?」
「へーきよ。それよりカリムが酔いつぶれたらそこをガバッと襲っちゃいなさいよ〜」
「な…な、な、何言ってるのよー!!」
「アハハハハハハハ♪」
あかん…完全に酔っ払いだよサリスの奴……
するとアルがススッと近寄ってきた。
「諦めろ。こうなったら誰にも止められん」
「ハハ……ハ」
そうして始まった宴会改め酒盛りはサリスが一升瓶を10本空をにして
酔いつぶれた次の日の明け方まで続いた。
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