「う〜ん……………はっ!?」

 眼が覚める。
 2度目の三途の川からの帰還から俺がいたのはベットの上だった。
 恐らくサリスの部屋だろう。
 辺りを見回すとすぐそこに――――――――

「カーム?」

 ファムがいた。

「あ―――――――」

 何を言えばいいのか頭の中で考える。
 今更どの面で話かければいいのだろう?
 さっきだって殴られたし、やっぱ俺のことを怒っているんだろうしな。
 ああ、どうすりゃいいんだろう…

「ねぇ…カーム」

 そうしていたら向こうから話しかけてきた。

「あ〜、何だ?」

「その…さっきのことなんだけど……」

「あ、ああ」

 少々防御体勢をとりつつ答える。
 いったい何なんだろうか?

「怒ったりしてる…?」

「―――――――――へ?」

 怒る?


 俺が?


 ……何で?


 わからない。
 怒るのはむしろそっちのはずだ。
 本当ならもっといろいろ言われてもしょうがないのに何でそんなことを聞くんだ?

「その、だ……な」

「うん」

「別に怒ってはないぞ、うん」

 そう言うとファムがパアッと顔を明るくした。
 ああ、そういえばこの顔も懐かしい。

「本当に?」

「ああ」

「カームッ!!」

 がばっと抱きつかれる。

「ファム」

「うん」

「体に響くから」

「うん」

「離れろって…」

「うん」

 そう言うだけでファムは離れようとはしなかった。
 俺も別に無理矢理離そうとは思わなかった。
 最後に見た時から何ひとつ変わってない薄い茶色の髪をくしゃくしゃっとしながら頭を撫でた。

「へへへ〜♪」

 嬉しそうな声を出すファム
 しかし、ふと思い出したように聞いてくる。

「帰って来たわけじゃないんだよね……?」

「そうだな」

「でも時々こうして帰ってくるんだよね?」

 この間アルにくっ付けたメモのことを言っているんだろう。

「今回はちょっと違うんだが…まぁ、そうだな」

「それでもいい、それでも…いい」

 抱きついている力が強くなってくる。
 それを感じて俺は

 本当に今更―――――――――


自分のせいでこんなにも悲しませていたんだ


 と、そう実感した。

◇◇----------------------------------------------------------------------◇◇

「どうするのよ?」

「どうしようかね」

 俺とサリスとでドアの前に立ちつくす。
 何か食うもんでも持ってくるかとサリスと2人で食堂まで行って帰ってきたらこれだ

「いきなりラブラブときたか」

「本当に。ファムも嬉しそうにしちゃって…」

「何だ、嫉妬?」

「よほど叫びたいのねアル?」

「すいませんでした」

 本当に殴りかかられそうなので謝っておく。

「でも、まぁ嫉妬と言えば嫉妬だけどね」

「ほぅ」

「だってさ、私たちがあの子笑わせるのにどれだけ苦悩したと思ってるの?」

 ああ、それはすごく悩んだ。
 特にコイツが考えたことに必要なものを集めさせられることに悩んだな。

「あんた今何か変なこと考えたでしょ?」

「いや、全然、まったく」

「ふん、まぁいいや。あの子が楽しいならそれで」

「………それもそうだな」

「行きましょ、お邪魔しちゃ悪いから」

「そだな」

 また食堂へと引き返す。
 これでファムちゃんがカリムを押し倒したりでもすれば面白いのになぁ
なんてことを考えてみながら。

 まぁ…ありえないだろうけど。


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