久しぶりの廊下を歩いていたら前方からアルの姿が見えた。
「カリムッ?!」
「何だよアル。んな大きな声だして」
「お前何もなかったのか?」
「何もって?」
「例えば……洗脳とかさ」
お前は自分が属する組織に対して何てこと言ってんだ。
まぁ気持ちはわからんでもないが。
「大丈夫だ。仕事を依頼されただけだよ」
「仕事?」
「詳しくは後で聞く事になってるけどな」
「そうか。で、どうする?」
「ん?」
「ファムちゃんだよ。お前がいるって知ったら走り出していこうとしたぞ」
「はは……」
まさかいきなりそんな話になるとは……
覚悟したとはいえ、少し戸惑う。
どうしようか……って―――――――
「ちょっと待てぇ!!」
いつの間にか足を紐で括られて荷物のように引きずられている。
痛い、痛い、痛えっ!!
「少し我慢しろ〜。どうせお前迷ってなかなか決めなさそうだし、それなら無理矢理連れて行くだけだ。
それにファムちゃんにも連れて行くって約束したしな」
「事情はわかっ――――――背中、せなかーーーーーー!! 擦れてるって!! ぎゃあああああああっ!!」
「ハハハ、我慢しろ男の子」
無茶言うな、この野郎!!
その叫びは痛さと熱さのあまり声にならずもがくことしかできない。
ていうか覚悟云々の前にコイツに殺される。
どうかファムのいる所が近くでありますように
心の底からそう願った。
はたしてそこは遠かった。
途中階段も降りたりして、そこでも引きずられたままだからもはや酷い状態だ。
1度三途の川というのも見えた。
なかなか綺麗ではあったが――――――――もう1度見たいとは決して思わない。
アルはとある部屋の前に立ちドアをノックした。
「サリス〜」
呼んでから約2秒。
ドアが開きそこから久しぶりに見ることになるサリスが現れた。
「アル、どうだったの?」
「ん」
と俺を指差すアル。
俺もよう、と手を上げる。
サリスはそんな俺を半眼で見つめて
「何、この死にかけの荷物は?」
とステキなお言葉をくれた。
「いやカリムだって、コレ」
次いでコレ扱いだ。
ろくな事にならないと微かに思ってはいたが大当たりだったらしい。
少し泣きたくなってきた。
「ファム〜〜〜来たよ〜」
ドキッとする。
パタパタと近づく足音
そのたびに心臓の活動が早くなる
そしてドアから姿を見せるファム
そこにいたのはいつも俺について回っていたり――――
俺が出て行く時に泣いていたりした人物
それと何ら変わりのないファム=レイグナーだった。
ファムはじーっと俺を見て――――――
「このボロボロなの何?」
と俺を指差した。
「「「……………………」」」
俺とアルにサリスの動きがピタッと止まる。
そんな光景に1人ファムが戸惑う。
「え……え? えと………どうしたの?」
オロオロしだすファム。
アルが口を開く。
「あ〜ファムちゃん? ……コレがカリムなんだ…けど」
「え……」
驚いた顔をして俺を見なおすファム
「カーム…?」
久しぶりに彼女独特の呼び方を聞く。
彼女は初めて会った時から俺のことを「カーム」と呼んで変えなかった。
何でもそれに慣れてしまっただとかだったが。
「カームなの?」
「……ああ」
「本当に?」
「………ああ」
「カーム――――――――」
そう言ってしゃがみ込むファム。
その拳は握り締められ………
「カームのバカーーーーーーーーーー!!!!!!」
「ごっ?!」
俺の腹に深々と突き刺さった拳はそのまま何度も俺を殴りつける。
「バカバカバカ!! バカーーーーーー!!!」
ドスッ、ドスドスドスドス―――――――――
「ちょ…ファム! 泡、泡吹いてるから!!」
「おい! カリム!! 生きてるか?! おい!!」
サリスが必死でファムを止め、アルが俺の頬をペチペチと叩く。
その頃俺は――――――――――2度目の臨死体験をしていた。
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