「さあ、どうする? カリム=ウォーレン」
そう言ってスラケンスは歩きだして―――――
再び下半身を無くした。
「な…んだ?」
上半身だけで起き上がり自分の体を見つめるスラケンス。
肩で息をしながら俺は告げてやる。
「無駄だ。存在意義を消失させたんだ、アンタの下半身はもう存在しない。だから足を新たに創っても
存在しない物を創るという無駄な行為にしかならない」
そして銃を構える。
「さあ、どうする? スラケンス=アンメルバ」
スラケンスはしばらく黙考した後、両手を挙げた。
「ふう…わかった、俺の負けのようだ。大人しく引き下がるとしよう」
「そうしてくれ」
「だが次に会う時はこうはいかないぞ?」
「そんなことがないのを祈るさ」
俺が言い終わると同時にスラケンスの体が地面に沈んで消えた。
そのまま歩きだそうとしたが、出血のせいで少し足がもつれている。
「くそ…まだオーティスがいるってのに―――――」
「心配しなくともすぐ終わるさ」
「しまっ――――!!」
背後から聞こえた声に反応して振り向こうとした前に首に手刀が打ち落とされる。
頭を揺さぶられたような感覚が全身の力を抜いていく。
体が地面に倒れる――――――――が、踏ん張って前転する。
「ほう。あの状態で手刀のヒットポイントをずらしたか。だが…無駄だろう」
その通りだ。
今にも意識は刈り取られてしまいそうで、体を支えるのも限界がある。
おまけに出血が加わって銃を構えることもできない。
「俺を……どうす……る…んだ……」
だから意識の無くなる前に質問することにした。
オーティスがそれにさあなと肩をすくめて見せたところで、俺の体は倒れ。
「先生から聞くんだな」
という台詞を聞いて意識は無くなった。
◇◇-------------------------------------------------------------------------◇◇
誰も来ることのない空白の時間。
その時間に食堂で骨休めをするのが私の日課であり、今日もそれをしに食堂へ入った。
と、先客がいたのを発見し軽い驚きを覚える。
だがそれで日課を変えるのもバカみたいなので、そのまま足を進める。
そして先客と背中合わせになる席に座って眼を閉じる。
「なんだかお疲れのようだな」
背後から声、確かめるまでもない。
「いきなり何のようだ?スラケンス」
「いや、あんたならこれをどうにかする方法を知ってるんじゃないかと思ってね」
「と言うとその上半身だけの体のことかね?」
「そ。何でも存在意義の消失だとさ」
「なら諦めろ。消失系統3大定義のうち2つを無くしてはどうしようもない。奴に頼めば本物と
寸分違わぬ義足ぐらい創れるだろう」
「おーけー。じゃ早速言ってくるんで報告を頼む」
「何だ」
「カリム=ウォーレンはアンタのとこの生徒が連れてくるだろうよ。まったく……手を出すなら
前もって連絡しろよ」
「それはすまない。何せ急な話だったので連絡しようがなかった」
「まあいいさ。んじゃ行くわ。ディスウィリウムのお仕事がんばんなティウル」
そう言って背後の気配が消える。
振り向けばそこには誰もいなかった。
立ち上がる。
じきにオーティスより連絡があるだろう。
歩きだす。
スラケンスの仕事を奪う形となったが、仲間である私がそれを達成したのだしよしとしよう。
食堂を出る。
さぁ、書類の山相手に格闘だ。
それが私――――――
ティウル=アンバークルの日課である。
だがそれも今日までだろうが。
と胸中で付け足し、私は自室までの長い廊下を歩く。
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