大爆発がオーティスとスラケンス両名を包み込む。
無言で立ち尽くし、爆発の後を眺めて気づく。
「ああ―――――だからか」
1人納得してそのまま煙が晴れるのを待つ。
あの2人がこの程度で死ぬはずもあるまい。
はたしてその予想どうり2人は無傷で立っていた。
両者ともが何のつもりだ? という眼をしてこちらを見る。
「どういったつもりだ?」
それを先に口にしたのはオーティスだった。
「今のはどちらの味方をし、どちらの敵をしたんだ?」
次いでスラケンス。
そんな2人を見て口を開く。
「お前らが殺しあうのは勝手だがな俺が理由に組み込まれてるってのが気に入らない」
2人はそれでも表情を変えない。
「だから2人とも退場させてやる」
その台詞に2人が眼を点にする。
かまわずに銃を構える。
それを見て2人が表情を変え、体勢を整える。
「白銀の契約によりうまれし鎖!!」
それすらかまわず撃つ。
放たれた銃弾は2人の近くの地面に命中し、2人に向かって雷光が走った。
2人は左右に跳んでそれを避ける。
だが2人が地面を跳ね空中に漂うその一瞬。
雷光は集まって雷球となり地面に足をつけた2人に迫った。
スラケンスはそれを体を半身ずらすような動作でかわした。
一方オーティスはそのまま後ろの草むらに跳びこんでそれをやり過ごした。
すかさずオーティスを狙う。
1対1対1の状況での戦いは隙を見せる方を優先的に狙うのは定石だ。
もちろん隙を見せないのも定石なのでスラケンスにも注意をする。
「赤の契約によりうまれし鉄槌!」
オーティスのいた付近を爆発が襲う。
生死については後回しにして、踊りかかってきたスラケンスのナイフをかわす。
「残念だな! 君のような能力の人間を殺さないといけないなんて!!」
「うるせえ。いちいち俺を変なことに巻き込もうとするな!!」
銃を撃つ。
だがスラケンスは至近距離で放たれたそれをかわしてみせた。
一点の狂いもなく俺の心臓めがけてナイフの刃が迫ってくる。
その前に予備の弾丸を1つ放り投げ、唱える。
「紫の契約によりうまれし拳!!」
眼の前に広がる重力の力場。
スラケンスの体が地面に押さえつけられ、そのままめり込む。
俺も力場に巻き込まれないよう思いっきり後ろに跳ぶ。
そのまま力場の消失するまで警戒しながら待つ。
やがて力場が消えて後に穴のできた地面が残っ――――――
スラケンスがいない!?
そこに重力に押しつぶされたハズの人間はいなかった。
ほとんど勘で――――しゃがみ込む。
何かが空を斬る音。
足払いをしかけると誰かが後ろに跳んでそれを避けた。
それは紛れもなくスラケンスだった。
「さすがに手強いな、カリム=ウォーレン」
「空間転移じゃあ…ない」
相手の言葉は聞き流す。
問題は奴の能力だ。
空間転移ではない――――
事前に空間が歪曲するとかの現象が見られなかったからそうだと思う。
思うけどそれじゃあ一体――――――?
「不思議か? 俺の能力が」
スラケンスが余裕そうな顔で尋ねてくる。
俺が無言でいると、いい反応だと言って再び襲い掛かってきた。
「同じ"覚醒者"だ! 特別に教えてやる!! 俺の能力は――――――」
そこまで言って俺に襲い掛かってきたスラケンスの姿が消えた。
正確に見たままを捉えると、スラケンスの体が地面に溶け込んだように見えた。
「な――――っ!!」
驚く俺。
それに合わせるかのように背後から響くスラケンスの声。
「そう、俺の能力は―――――――『同化』だ」
その声の意味を理解するのに数秒を費やした。
そしてその数秒はスラケンスが背後から俺の右肩にナイフを突き刺し
俺の前方の地面からまるで生えてくるように現れるまでと
ほぼ同じだった。
「くっ……」
傷口から勢いよく血が出る。
服を破いて傷口を縛る。
その間にも歩み寄ってくるスラケンス。
「最後にもう1度聞くぞ。俺たちの仲間になるつもりは?」
「……あると思うか?」
ワザと余裕のある感じの口調で言う。
少なくとも気に入ってくれたらしい。
「あばよ。カリム=ウォーレン」
ためらうことのないナイフの軌道。
だが次の瞬間――――――そのナイフは綺麗に砕け散った。
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