そして、やたらと都合のいいタイミングで目覚めたデニスを加えて夕飯となった。
 エリナも最初は戸惑っていたみたいだが俺が同じ"感染者"と気がつくと普通に話してきた。
 そのおかげでなんとか無事に誤解も解けた。
 そしてさらに話すうちにいろんなことを聞かされた。
 もういつからここに住んでいるのかわからないこと
いろいろ辛い生活だったけど、もう慣れてしまったということ
決していい話ではないのにエリナは楽しそうに話していた。

「――――でもやっぱり食料とかは厳しかったんじゃないのか?」

「アハハ、それはそうですけどコツさえつかめばどうってことなかったです」

 なかなか強い…!
 ってほのぼのしてる場合じゃない、確認しとかないと。

「エリナ1つ聞くけど君は宝とかは知らないんだな?」

「はい。何のことだかさっぱりです」

「ならやっぱり村の奴が―――!」

 ハッと口を閉じた。
 さっき散々本人の眼の前で言っておいて今更だが、やっぱ自分のことを殺そうとしている奴がいる
ってのは嫌だよなぁ……俺のバカ。

「いいですよ気を使わなくても」

 俺の考えてることがわかったのだろう、エリナがそんなことを言ってきた。

「もともとこんな所に住んでるのだって村の人に追いやられたからだし、飢えで死ぬと思ってたんでしょうし」

 やはり楽しそうにエリナは語った。
 と、それまで黙って飯を食ってたデニスがいきなり立ち上がった。
 何だ何だ?

「さあ悪党。足の1本くらいは覚悟――――」

オマエはいままでの会話の何を聞いとったねんっ!!!

 横っ面にストレートをくらわす。
 ゴキリと鈍い音を出してデニスが吹っ飛ぶ。

「いや話は何も聞いてない……カリム、何故傾いているのだ?」

「オマエだオマエ」

 首を傾げた格好のまま立ち上がったデニスはそのまま考え込んで……また倒れた。
 少しやりすぎたか?
 近づいてデニスの様子をうかがうと普通に寝ていた。
 ため息をついてエリナを見ると驚いていた。
 まぁ…首が曲がるなんて光景は普通見ないからな〜

「ああコイツなら心配ない。それよりすることがないんならもう寝ようかと思うんだけど」

何だか口から泡を吹き出しているっぽいデニスに視線がいかぬようにそれとなく話を変える。

「あ、はい。でも…寝る場所とかが――」

「エリナさえ問題なければここでいいけど?」

「それはかまいませんけど…布団とかが私の分しかなくて」

「それも大丈夫、この2人は風邪とかひかないから。俺も…ほら」

 荷物から小さめの毛布を取り出しエリナに見せる。
 それでも心配そうだったが「大丈夫だから」とエリナを自室へと向かわせた。
 エリナが部屋に入ったのを確認して俺も横になった。
 何でエリナはあんなに楽しそうに話をするのだろうか?
どう考えたって楽しく話せることではない―――――
 なのにエリナは楽しそうに話していた。
 何故だろう?
 現時点ではわかるはずもない考えの答えを求めてその日はずっと悩んでいた。

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 ……いつの間にか寝ちまったのか。
 朝。眼が覚めた時には既にデニスは起きているらしく姿が無かった。
 うーん、と背伸びして気がついた。
 朝食が用意されている。側にはメモがあった。

『朝の狩りに行ってきます。朝食は用意してありますので遠慮せず食べてください。
あとデニスさんですが、狩りを手伝ってくれるとのことで私と一緒ですのでご心配なく。』

 狩りとか普段聞かない単語が書いてあるが朝の頭で考えるのは無理なので大人しく朝食を食おう。
 朝食は見たことのない食材ばかりだったが、なかなかうまい。

「う……う〜」

 シーラがもっそり起きはじめる。低血圧?

「いま何時〜?」

「詳しくはわからないが朝であることは確かだ。ほら飯もあるぞ」

「ん〜誰が作ったのコレ?」

「エリナ…あ〜っと昨日オマエが勘違いで怒鳴ってた」

「何でその子がご飯作ってくれてるの?」

「昨日オマエが気絶してから話てるうちに誤解もとけて、仲良くなったってところ」

「ふーん」

 そう言って朝食をパクパク食べ始める。
 寝ぼけてるのか食材をまったく気にしていないがうまいし別にいいだろう。
 そしてシーラが朝食を食べ終わったぐらいにデニスとエリナが帰ってきた。

「今日は駄目でした」

「うむ、駄目だった」

 そう言いながら2人は水を飲み始めた。
 そして狩りの時の話を聞きながら少し時間がたって
唐突にシーラが叫んだ。

村の奴らぶっ潰す!!

 3人の視線がシーラに集中する。だがシーラは特に気にもせず

「私をよくも騙そうとしたわねぇ〜フフフ……地獄を通り越して天国に行かせてやるんだから…!!」

 と言って走り出した。
 何か言ってることがわけわかんなかったけど―――

「朝から騒がしい奴だな」

「うむ」

「ですね」

 誰も止めようとは思わなかったようである。


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