「よっ…と、これでいいのかデニス?」

「ああ」

 携帯用の小型ランプをつけてデニスに渡す。
 本当はシーラをほっといて飯にしようと思ってたんだが、それで文句言われるのは嫌なので
後を追うことにした。
 そしてデニスの案内で進んむこと約5分―――
確かに民家があった。
 木で造られた…まぁ俺の貸家よりは断然立派だ。
 デニスの言っていたとおり明かりもついている。
 シーラがどこからか中の様子を探っているだろうと思うんだけど…

いいから早く宝を渡しなさいっ!!!

 ――――――――――――オイ

「……なぁ、あの女本当にトレジャーハンターか?」

「そうだが?」

 嘘だろそれ? 信用できねぇ。
 はぁ…もう騒ぎが始まってるならしかたがない。俺たちも行くか。
 開けっ放しになっているドアまで歩いて中の様子を見る。
 そこには警察などがよくやるような、大袈裟に派手に机を叩きながら相手を一方的に怒鳴るシーラと
そんなシーラにビクビク怯えている女がいた。
 ――――――怯えてる?
 自分の頭の下した判断に疑問を感じたが眼に見えるのは間違いなくシーラの怒鳴り声に怯えている女だ。
 黒い髪を3つ編みにしているどこにでもいそうな女。
 ただ1つ――――
眼が緑色だということを除けば。

「"感染者"か」

 後ろに立って俺と同じように中の様子を見ていたデニスが言う。
 それに気づいたのかシーラと女がこちらを見た。

「ちょっと! 遅いじゃない!?」

「そっちが先に行きすぎだ。で、宝は?」

「それがねぇ…結構口が堅いのよこの女」

「ふむ…」

 ―――――――――とりあえず
 2人が会話をしている間に家の中をザッと見回し、女を見る。
 女はシーラやデニスを困惑した眼差しでジッと見ている。
 ついでに言えば俺のこともだ。
 こうなると密かに予測していたことはほぼ当たりだろうな。

「で、どうする?」

「腕の1本でも切り落とせばいい」

「ひっ!?」

 真顔で言い放ち漆黒の大剣を構えるデニス。
 この男は洒落じゃなくやるに決まってると判断してとりあえず殴り倒しておく。

「なぁシーラ。少し聞きたいんだがこの家のどこに宝があると思うんだ?」

 と言いもう1度辺りを見る。
 必要最低限の物以外は何もない家だ。
 俺だって家には必要最低限の物しか置いてないつもりだったがこの家はそれを上回る。
 とゆうか…………古い。めちゃくちゃ古い。
 場所の問題なのか水道がないらしい、水瓶がある。
 ていうかもう正直に言えばいまの時代でこんな暮らしはありえない。
 明かりにしたっていまは魔法機械のものくらいなのにこの家のはその明かりよりも暗い。
 たぶんもうお眼にかかれない普通の機械式の発電機の明かりなんだろう。
 んなワケでこの家に宝を置いておけば一目瞭然だろう、なのにそれらしいものがない。

「それは私も変だと思ったけど森のどこかに隠したかもしれないじゃない!?」

「ま、正論だ。だけどこの女が村の人たちの言う悪魔のような人間に見えるか?
オマエに怒鳴られて怯えるような女だぞ?」

「うっ……それは……」

 言葉に詰まるシーラ。
 頼む――――――いいかげん気づいてくれ。

「はぁ〜」

「何よ!! そのため息は!?」

「本当に気づかないのな。いいか? 俺たちは村の奴らに利用されてんだよ」

「やはりそうか」

 唐突にデニスが復活する。
 すかさずカカト落としをくらわす。しばらく寝てろ。

「ちょっと…どういうこと?」

 パートナーが気絶させられたことには一切触れず聞いてくる。
 当然といえば当然だがな、むしろありがたい。

「だから、ようはこの女を殺すための手伝いだろ。宝を持ってるって言えばオマエらは嫌でも動くし、
その人物を捕らえる。それを村まで連れてって村の奴に「後は我々が警察機構の方をお呼びします」と
でも言われれば大人しくそいつを明け渡す。後は動きのとれないそいつを殺すだけっと」

「でもこんなとこで生活してたら死んでるかもしれないじゃない」

「その場合は村の奴は死んでる事が確認できて万歳ってことだ。もしどこかに逃げてたとしてもきっと
村の奴は万々歳だろうし。ようはこの女が死んでるか、もしくはもう自分たちの近くにいないことを確認し
たいんだろう」

「じゃあ何? お宝はここにはないの?」

「ほぼ間違いないと思う」

「うそおおおおおぉぉぉぉぉ〜〜〜」

 あ、倒れた。
 むう…哀れな奴。

「あ…のぉ」

 遠慮したような声。
 振り向くと女が心配そうに倒れている2人を見ている。

「ああ、こいつらなら問題ない(ハズだ)。そんなことより悪かったなイキナリ驚かせて」

 とりあえず2人を邪魔にならない場所に寝かせながら自己紹介をした。
 女も「私の名前はエリナです」と自己紹介してきた。
 不覚にもそこで俺のお腹がぐ〜っと鳴ってしまい、詳しい話は後にしてご飯にしようということになった。


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