何だかんだ言いつつ村にたどり着いた。
近くにいた人にトレジャーハンター協会の者だと言うと
村中の人間が集まってきやがった。
「おお! よくぞ来てくださいました」
なんてお決まりっぽい台詞と共に村長が話しかけてくる。
「そんな事はいいから仕事の内容を説明して。こんな遺跡もない地域に何で私たちが呼ばれるのかしら?」
あ、一応気がついてはいたのか
仕事は真面目にやるみたいだな。
「金にならないなら帰るわよ?」
………前言撤回
「お金になるかは……保証しかねますが……れっきとした仕事です。
実はこの森の奥に悪魔とも呼ぶべき人間が住んでおるのですが、そいつが遺跡にあった貴重な品々を
持っておるのです」
「ふむふむ」
うわ〜眼が光ってるよ…シーラの奴。
「本当は警察機構に連絡しようとも思ったのですが、遺跡の宝が関わっているということだったので
あなたがたに連絡させていただいたわけです」
「ほうほう」
「で。できましたら宝を回収するついでにそいつを捕まえていただきたいのですが――」
「まっかせて!! そんな奴私がコテンパンにしてやるわ!!」
「いやー頼もしい! まさにトレジャーハンターの鏡ですな!!」
「当然よっ! さあ行くわよ!! お宝のところへ!!!」
―――――――――――――――――――――――――――と、まぁ
そんなわけで森をうろついているわけである。
というか主観だろうが客観だろうがわかることは1つ。
――――――――迷子です、俺たち
こいつらがトレジャーハンターだからって安心していた俺がバカだった―――
いま眼の前で木の枝倒して進路決めてるシーラと
理由もなくこちらだと断言するデニス
お互いの言い分を譲らぬまま言い争いを1時間は繰り広げている2人を見て痛いほど実感した。
「なぁ……いいかげん決めてくれ。そろそろ寝る場所も確保したいしさ」
「だから! 私はこっちって言ってるの!!」
と左を指差すシーラ。
「いいや、こっちだ」
と逆の右を指差すデニス。
それを見て俺は――――――
「んじゃ右だな」
デニスの指差す方に向かい歩き始める。
「なんでよおおおおおぉぉっ!!!!」
「いやコインで表だったらお前で裏だったらデニスって決めて、心の中でアレコレしたら裏だったから」
本当は納得いかないんだろうが自分たちの決定の仕方もあってかしぶしぶ歩き始めた。
と…ちなみに俺はこいつらを手伝うことを認めてはいないからな。
単にここまで来たらもうどうにでもなれ! って思っただけなんだからな!!
そのまましばらく歩き続け、気がつくと辺りはもう暗くなっていた。
この森は下手すると200年以上たったのもあるかもしれないくらいでかい樹が多いので
余計に暗さを感じる。
「ねぇ……ちょっと」
後ろにいたシーラが話しかけてくる。
やっぱり道が違うんじゃないの? とかは俺でなくコインに言ってくれい。
だがシーラが言ったのはそんな事ではなく――――
「デニスはどこ?」
………………あ〜、そういえば――
「いないな」
先頭を歩いていたはずの非常識のバカはどこにも見当たらなかった。
でもアイツ黒いしさぁ
「しかたないんじゃない?」
「何がよっ!?」
でもまぁ、確かにボケやってる場合じゃない。
こんなとこではぐれたとなると――――
ただでさえ俺たち迷子なのに、もっと大変なことになってしまう
「おーーーーーーーーい!! デニスーーーーーーーーーーーーー!!!」
力いっぱい叫ぶ。
木々の間で木霊して俺の声が響いた数秒後。返ってきた返事は
「アオーーーーーーーーーーーンッ」
なるべく何も考えずシーラを見る。
彼女もそんな感じだったのだろう、バッタリと眼が合った。
お互い無言で得物を取り出す。
音は微かに
だが行動は大胆に
ザッと音がしたかと思えば、暗さでよく見えないソイツはシーラの背後に立っていた。
「呼んだか?」
ソイツの心臓めがけて銃を撃とうとしていた俺と
得物のナイフを刺そうとしていたシーラの動きがピタッと止まった。
「…デニス。オマエどこにいた?」
「近くを見て回っていたんだ。呼ばれた時返事もしただろう?」
「返事?」
「ああ。確かにした」
「もしかして…あの犬の遠吠えのこと?」
「そうだ。ほら、シーラは聞いているではないか」
「………人間の言葉を喋らんかいっ!!!」
「だが―――」
「だがじゃねえ!! オマエは本当に紛らわしいことしやがって!!!」
「だがしかたなかった。気づかれるわけにはいかない」
「何に?」
「遺跡の宝を持っていると思われる人物にだ」
あまりの台詞に思わず力が抜けた。それって…
「見つけたの!?」
「ああ。あちらに明かりが見えた、民家のようだ。人もいる」
とデニスが指差した途端。
「待っててっ!! 私のお宝ちゃん!!!」
とシーラが走り出した。
ああ…アイツって思考回路のほとんどが金かお宝に直結してんだろうな…
途中「イタッ!」だの「きゃあっ!?」だの悲鳴が聞こえたが気にしないでおこう。
とゆうか――
「止めに行かなくていいのかデニス? あの調子ならやり過ぎかねないぞ」
「止める気にならん」
………お前ら本当にパートナーか?
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