ガラガラガラガラガラガラガラガラ―――――

 ああ…のどかな街道だなぁ―――

「じゃねえよっ!!」

 何で俺が馬車の業者みたいな真似しないといけねえんだー!!

「うっさいわねぇ〜。ちゃんと運転しなさいよ!」

「っ!! だいたいな! 俺がお前らに付き合う必要なんてまったくないだろがあっ!!」

「何ですってっ!? アンタが私の金盗ったからいけないんでしょ! それを仕事手伝えばチャラにしたげる
って言ってあげてるのによく言うわねっ!!」

「だから俺は正当に受け取ってるんだよ!! 不法侵入と合わせて訴えたら俺が勝つぞ!!!」

「まだ言うの!? デニスの稼ぎは私の稼ぎなのっ!! アンタはそれを盗ったんでしょおっ!!!」

「どうひん曲げたらそういう結論になるんだ!! だいたい俺なんかに手伝いを頼みに来なくちゃいけなく
なったのはお前が行方をくらましたからだろうがっ!! お前が悪いんだよっ!!! デニス! 黙ってないで
オマエも何か言ってやれっ!!!!!」

「ちょっ! デニス!! こんな奴の味方なんかすることないんだからね!!!?」

 運転席から俺。馬車の中からシーラ。
 同時に俺の横に座っているデニスを睨む――――――

「―――――――スー」

寝るなああぁぁぁぁっ!!!!!

バキイッ!!!!
 馬車から殴り落とす。あ〜クソ!
 あの時――――――――
 デニス1人でさえ相手にすれば疲れるんだからパートナーを起こしたらどうなるかもう少し考えてれば
よかったんだ。
 結局わけのわからん話を3時間聞かされたあげく仕事を手伝うハメになった。
 しかもこの女タダで働かせる気だったんだから油断できない。
 まぁ最終的に6:4の4が俺なんだが…これでもマシな交渉をした方だ。

「何よ急に黙り込んで。まぁいいわ、私寝るから〜。目的地に着いたら起こして」

 返事はしない。が、特に気にせずにシーラは馬車の中に引っ込んだ。
 いま向かっているのは同じ大陸のとある小さな村だ。
 馬車で4時間くらいだろうから昼過ぎには着くことになるな。
 とゆうか…遺跡も何もないぞ?
 地図をジッと見るがまったくそれらしきものがない……だとしたら

「何しに行くんだ? こいつら」

 協会も話は依頼人から聞いてくれと言っただけで詳しくは知らないらしい……って――
そこで違和感に気づいた。
 さっき殴り落としたバカがまだ戻ってきていない。
 変だな。いつもなら呼ばなくてもいつのまにか戻ってきてるのに。
 ひょいと後のほうを見る。
 やや遠めに地面に横たわっているデニスが見える…ピクリとも動かない。
 ああ、そういうことね―――

「まだ寝てるのかアイツ」

 ポツリとつぶやいて馬車を走らせた。
―――――アイツなら平気だろう。

 そのまま穏やかに時間は過ぎ、途中で平気な顔してデニスが合流して、問題なく村に着いた。
 いや、正確には村の少し前だ。

「ちょっと…何よコレ?」

 眼を覚ましてそれを見たシーラが間抜けな口調でつぶやく。
 実際そうなってもしかたないだろう、俺もデニスもそうだった。
 樹がはえていた――
街道のど真ん中に4、5本。
 少し向こうに見える村は大森林の近くだし樹があっても不思議ではないのだがあまりにも
不自然すぎる。
 かといって回り道しようにもでかい岩があちこちにあってできそうにない。
 これは……

「歩きだな、ここからは」

 言おうと思ってたことをデニスが言う。
 でもこればっかりはしょうがないよなぁ。

「ふざけないでよ! 荷物ここに置いてくの!?」

「必要最低限のもの以外はな」

 この女は……お前もトレジャーハンターだろうが。

「せっかくいろいろ持ってきたのに…そうだ!!」

 ―――――言いたいことはわかりきってるっちゅうねん。

「俺は持ってかないからな」

「何でよ!? アンタ私に借りがあるのよ!!」

いや、ないから

「まぁ仮に百歩譲って借りがあったとしよう、あくまでも仮に。その分は仕事を手伝うことでチャラだろ?
荷物持ちは関係ないはずだが?」

「む〜っ……いいわよ! まったく…何か盗られでもしたら責任とってよ!?」

 俺はぜひにでも――――――
自分の荷物以外何もない馬車から何を盗めるのか教えてほしいんだがな
 でもそれはあえて口にしないでおく、
疲れたくないから。


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