「返しなさいよ」
パタン。
…………………ちょっと…待て。
え〜とこういう厄介なことに巻き込まれそうな予感がするときは頭の整理だ。
まず、いまは―――――間違いなく朝だ。ついでに寝起きだな。
んで何でドアを開けたか――――――いつもどおり新聞をとりにだよなぁ。
――――――――よし。
ここまではいい。いつもどうりの平和な朝だ。
問題はここから。
ドアを開けた――――――ら、女が立ってた。
加えて言うならめちゃくちゃ不機嫌そうな顔して。
んで『返しなさいよ』と――――――――
だから―――――待てや。
返せ?
……俺あんな女から何か借りたか?
否。借りてない。
借りたというと―――赤字がでた時に借金はしたけど、利息を含めてきっかり返済したしなぁ。
やっぱりあんな女から何か借りた覚えはないぞ?
「ちょっとー!! 開けなさいよ!!!」
何なんだ〜いったい?
「はいはい……悪いけど俺あんたに返すものなんて―――」
「金よ」
何を言ってるんだこの女?
「それについては俺が説明しよう」
「うわあああああああ!!!!」
振り向くとデニスがコーヒー(俺の)を飲みながらソファーでくつろいでいる。
…戸締り万全。秘密通路は先日完全封鎖。
なのにどこから入り込んだんだテメェ
「どういうことだ…デニス?」
台詞は穏やかに言ったが顔はこの上なく引きつっていただろう。
「ふむ。まぁまずは紹介しておこう。そこのは俺のパートナーのシーラ=ゴルテウス」
「ちょっとぉ!! その紹介のしかたは何よっ!?」
俺に対しての怒りはどこへやら。
さっと俺の横を通り過ぎてデニスに突っかかる。
まぁ普通に騒ぐだけなら我慢できるがデニスがいる時点で無事に済む確率は低いし―――
「とりあえず黙って座れや」
銃を向けて二人を黙らせる。
こうでもしないとまた家具が壊されかねないからな。
「って! 違うわよ!! アンタに話があるんじゃない!?」
ハッと気づいたらしいシーラが再びこっちに突っかかってくる。
「金とやらのことだろ? だからそれについて聞こうとしてんだ。黙ってろって」
「そうだな。悪いが寝てろ」
「はうっ」
ビシリと鋭い手刀をくらわせるデニス。倒れるシーラ。
つかパートナーに平気でそんなことできるこいつって…
ひどいとは思うがそんなことどうでもいい。
「何で俺がこの女に金を返さないといけないんだ?」
「先にこいつをソファーに寝かせる。手伝ってくれ」
自分で気絶させてこの男は……はぁ〜
とりあえずソファーに寝かせて、ザッと観察してみる。
歳はデニスとそう変わらないだろう。髪は青、眼はたしか髪と同じ青だったな。
なんつうか血の気の多そうな奴だよなぁ、うん。
「で、説明してもいいか? カリム」
「おお、いいぞ」
「話は例の"ゴースト化現象"の事件の後になるんだが――」
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「む、帰ってたのかシーラ?」
「ええ。それより私がいない間に仕事に行ったんでしょ?」
「確かあれはお前が行方をくらましたんだが」
「まあいいじゃない。それより報酬は?」
「いま借金を返済してきた。これが残りだ、そら」
「何コレ? ………やけに少なくない?」
「今回は仕事を手伝ってもらった奴と報酬を分けたからな」
「なんですって!? 誰ソイツ!!」
「以前仕事でいっしょになったことのあるカリム=ウォーレンだが?」
「行くわよ!!」
「何故だ?」
「何故も何もあったもんじゃないわよ! アンタの稼ぎは私の稼ぎでしょ!? そんな奴にくれてやる
必要ないじゃない!!!」
「いや、しかしだな―――」
「しかしもクソもないっ!! 行くったら行くのっ!!! 私の金よっ!!!!」
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事情はわかったが………
「理由になってないな、ソレ」
もうこれっぽっちにもだ。というかむしろ謎が1つ解決したぞ。
何でデニスにパートナーがいるのかが――――――
ようはこの女。
デニスが非常識なバカなのに対して
―――――理論がぶっ飛んだバカなんだな
だよなぁ〜そうでなきゃデニスとパートナーなんて組めないよなぁ。
「よし…納得」
「何がだ?」
「いや気にするな。ところでこの女に話が聞きたいんだけど―――どうやって起こせばいい?」
「簡単だ」
そう言うと立ち上がって、わざとらしい口調で
「あんなところに札束が」
ってんなバカな手に――――
「どこ!? 札束どこっ!!?」
引っかかるのかよ!!
あ〜クソ。そういうキャラなのか。
「つうか―――――」
今回も厄介なことになるんじゃないだろうな?
頼むからやめてくれよ〜
もう赤字は嫌だ!!
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