「おい小僧、さっさと眼を覚ませ」
「ん………あ?」
何か浮遊感じみたものを感じながら眼を開ける。
はるか彼方に大森林が見える。
何で彼方に今までいたハズの森が見えるのだろうと思ったが、眼の前を1羽の鳥が通りすぎたため
疑問はすぐに解決した。
俺は空に浮かんでいた。
正確にはおっさんが俺を抱えて空に浮いていた。
「ぎょおおおおおおおおおおおおおっ!!?」
「うるさいわっ!! 黙らんとこのまま落とすぞ?」
「……………………すみませんでした」
大人しく謝る。
しかし何でまた――――――
「俺らは浮かんでいるんだ、おっさん?」
「エリナの能力を侮っていた。どうやら能力の支配下にある樹々は、陣を形成して簡単な魔法が使える
らしい。小娘が魔法を使う瞬間に反射の魔法を使いおった。もう少し上空に逃げるのが遅かったら…
跡形も無く消し飛んでいただろうな」
「はぁ…………って、デニスにセフィは!?」
助けてくれたおっさんに感謝してる場合ではない、なんせおっさんが抱えているのは俺だけで
デニスもセフィもいないのだ。
「心配せんでも大丈夫だろう。小娘は一応防御系統の呪文も使用していたから無傷で済んでいるはずだ。
だいたいお前がきちんと小娘の防御呪文の範囲に入っておれば私が助ける必要などなかったのだぞ」
「それは……モウシワケナイデス」
「ふん、まぁいい。だがこの力は何なのだ? どう考えても常識ではありえない」
上空からあちこちで異常な成長をしている大森林を眺めておっさんが呟く。
「何だよ諦めるのか?」
「………お前は確か1泊2食の恩があるとか言っておったな、ならエリナの話し相手になったのだろう?」
「は…? ああ…そうだけど?」
何だよおっさん? いきなりそんなこと聞いてきて。
不思議に思ったがおっさんはどんどんと話していく。
「なら変には思わなかったか? エリナは普通に考えれば決して楽しくないようなことを楽しそうに話して
いただろう?」
「ああ―――」
話をしていた時のエリナの顔を思い出す。
彼女は話しをする間ずっと笑っていた、演技でもなんでもなく自然に笑っていた。
それを夜、眠ってしまうまで疑問に思って考えていたが、答えはでてこなかった。
「だけど…それがどうしたんだ?」
「エリナはそれしか人に話せなかったんだ、決して楽しくはないがそれしか話せることを知らない。
だからあんなに楽しそうに話すんだ」
それは――――――――なんて残酷なんだろうな。
とおっさんは付け加えた。
「謎が解けたのは感謝するけど俺の質問の答えは?」
やはりこの質問もおっさんには愚問だったらしい。
何を言っているんだという顔で
「諦めるわけがなかろう、戯けが」
と言われてしまいましたよ、はい。
◇◇-------------------------------------------------------------------------◇◇
ペシペシ
「う……ん…」
誰かが私の頬を叩いている。
何だろう? もう朝なのかなぁ?
ペシペシペシ
「いた………い……」
また叩かれた。
はて? いつもこんな起こされ方だったっけ?
バチィィンッ!!
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!?」
がばっと起き上がる。
何々? すっごい痛かったよ〜?
ヒリヒリ痛む頬を抑えながらキョロキョロ辺りを見回すと、1人の男の人が私の側にしゃがみ込んでいた。
確かデニスっていう人だ。
「起きたか?」
デニスさんは私が眼を覚ましたのを見て淡々とした感じで聞いてきた。
「はい〜、でも何で叩かれたんですか〜?」
「気を失っていたからだ」
こちらの質問にやはり淡々と答えてくる。
駄目だ…私この人とは気が合いそうにない。
「それより起きたなら彼らみたいに浮かしてくれると助かるのだが」
「へ?」
デニスさんが喋りながら上を指差すので空を見上げる。
見えづらいが何か小さな黒い点のようなものが見える。
「あれは〜?」
「デニスとオピリオスだ。どうやら爆発を回避するため上空に逃げたらしい」
そう言われてようやく私は気絶していたワケを思い出した。
私が魔法を使う瞬間に枝が反射の魔法を使ったんだ、あらかじめ防御呪文を使っていたから助かったけど、
それを防いだ衝撃で吹き飛ばされてしまい気絶したのだ。
まぁそんなことはともかくここはデニスさんの言うとおり上空に逃げたほうが懸命だろう。
「じゃ行きますから〜。あ、別に私につかまる必要はないですからそのまま立っていてください〜」
デニスさんはコクリと頷いてそのまま立った。
私は手をかざして浮遊魔法の陣を想像する。
その想像は魔力の光で現実へと瞬時に3っつ描かれる。
それらが重なり、私たちを一気にカリムさんたちがいる高さまで浮かばせる。
「遅かったな小娘」
たどり着いた瞬間オピリオスが声をかけてくる。
だから小娘じゃないのにぃ……!
「別にいいじゃないですか〜。私はあなたとは違うんですから〜」
「そんなことは当たり前だ。それより小娘はどれくらい浮遊していられるのだ?」
「む……う〜、1時間くらいです〜。デニスさんも含めて〜」
「上等だ。ではまぁ後はどうするか決めるだけだな」
「それなんだけどさ」
いきなりオピリオスに抱えられたカリムさんが話しだす。
本人には言ったら失礼だけど、少し可笑しい。
私がそんなことを考えているのには気がつかずカリムさんは続きを話す。
「もしかすればどうにかなるかもしれないぜ?」
自信ありげに話すカリムさんだけど、正直胡散臭い。
どうやら視線から察するに他の2人も同様らしい。
場の空気がとても冷めていた。
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