自崩
大爆発
即席で結成された魔法使いコンビが森を根こそぎ破壊していく。
とはいえこの森は大陸でも有数の大森林だ。
眼に見える分にはかなりの量が破壊されたように見えるが実際は4分の1程度の量だろう。
「む……」
それだけ呟いておっさんが魔法を使うのを止める。
???
俺にデニス、セフィが疑問符を浮かべておっさんを見る。
最初に口を開いたのはセフィだった。
「オピリオスさん〜? どうしたんです、いきなり〜」
そんな台詞をあっさり無視しつつおっさんは俺たちに話しかけてきた。
「このエリナが起こした現象…能力と言うべきか…とにかく仮にこれを"ユグドラシル"
と呼ぶとする。そして、今までの状況から判断できる能力の内容を述べると、
この能力は樹や草…つまり植物類に作用するものと思われ、範囲はこの森全域程度と考えて
差し支えあるまい。
次に、能力の支配下にある森などは破壊されても残っている部分がある限り異常増殖再生ができる。
そして魔法で破壊された場合、破壊されるごとに耐性がついていくというところだがここまでは
いいか?」
無言で頷きたい、が…
「魔法に対して耐性?」
ここだけは俺やデニスはわからない。
デニスは魔法なんて使えないから論外だし、俺の銃魔法だって魔法とは厳密に言うと異なるからだ。
「私はそんなの感じませんけど〜?」
「それは小娘が爆発系統の呪文を使うせいだろうが。ああ、とにかく質問に答えるが…最初に
自崩させた時は6割程度の力で済んだのだが、今自崩させた時は7割くらい使った。だが自崩させれた
範囲は同じだった、だから耐性ができているのだと思うというわけだ」
「ははぁ〜、つまりこのまま片っ端から破壊するのは少々難しいと」
「そうだ、だがそんなことを言っているう――――――滅せよ!」
少し前に見えるところまで復活してきた森の樹に向かい唱えると、そこで進行が止まりまた自崩して
いくのが遠眼に見えた。
「今ので7割と少しだ」
おっさんは平然として言っていたが少し困った顔をしている。
それを見てか見ずにかセフィは
「とにかく、悩んでも解決はしませんよ〜」
と言って手をかざす。
陣が3っつ瞬時に描かれ、重なり合う瞬間――――
変化が起きた
手前の方にいきなり木の根が現れ複雑に枝を伸ばしていく。
それが何か陣のようなものを形成しているのだと認識できた時。
―――――俺の視界は真っ白になった。
◇◇-------------------------------------------------------------------------◇◇
私は真っ黒な視界の中、思い出した。
私が村を追い出されここに住み始めたとある日。
私は私の中から時間という概念が薄れていることに気づいて凄く怖かった。
こんな悲しすぎる生活のサイクルを受け入れようとしている自分がいるのだと思って
恐ろしかった。
でも私の側には誰もいてくれなかった、それがまた私を悲しくさせた。
私にとってその家は悪夢みたいに感じられた。
だから飛び出してとにかく走った。
あの家にいては私は何かに殺される――――――
そう思ってひたすら走った。
でも、ろくな生活をしていなかった私の体力は長く持たず、すぐに動けなくなってしまった。
おまけに暗い夜の森を適当に走ったから迷子になっていた。
この時私は死ぬんだなぁと思った。
不思議と当たり前のようそうに感じた。
近くの樹に背を預けて座り、眼を閉じた。
きっと私の側には誰もいない。
なら―――――――
なら―――――――
―――――――でも
もたれていた樹を見る。
ここに来て初めて出会ったのはあなた達。
もちろん会話などできるはずがない……そんなのわかっている。
けどあなた達だけは私の側にいてくれる。
「だから…友達になってくれる?」
それは私の本心。
それが伝わったかどうかわかるわけもなく私は深い眠りについた。
朝――――私は眼が覚めた。
生きている。
何故だろうと思っていると、不意に口に何かか落ちてきた。
舐めてみる―――――甘い。
落ちてきたであろうところを見ると、樹から蜜が出ているのが見えた。
どうやらこれのおかげで偶然にも助かったらしい。
「ありがとう」
返事のない相手にお礼を言い、帰ろうとした……が私は迷子だった。
どうしようかと思ったが深く考えず歩き始めた。
何故か道を教えてくれた気がしたから、とにかく歩いた。
そして無事家に着いた。
その頃には昨日恐れていたことはすっかり消え去っていた。
「ありがとう!」
私はもう1度お礼を言った…さっきとは別の意味で。
きっとこの時からだったのだろう。
私が森の草や樹と繋がりを感じるような気がしたのは。
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