「なにって―――」

「正直に言えよ小僧。そしたら五体不満足で済ましてやる」

 五体不満足って……駄目じゃんか。

「あのなぁ―――――」

「オピリオス=ガル=ネファルバ〜!!」

 俺の声はのほほんと怒りが混ざってそうで実はのほほんとしてるだけのわけのわからない声にかき消された。
 いつの間にやらセフィはオピリオスと呼んだおっさんと対峙している。
 2人を見比べる。
 2人とも魔法使いらしい格好ではあるが、
 1人はローブを適当に羽織っているだけで、杖すら持ってないポケ〜っとした女。
 もう1人はローブをきちんと羽織って、杖も持ち貫禄も感じるおっさん。
 どちらが魔法使いだ? と聞かれればまず間違いなくおっさんを指差すだろう、断言してもいい。
 そのおっさんはセフィを見るなり

「ほぉ…7代目のジックロウサーのリーダーはこんな小娘だったか」

 と言い鼻で笑った。
 もっともだぞ、おっさん!!
 セフィを見るとポケ〜としてはいたがちょっと顔が引きつっている。

「私はこれでも立派な成人女性です〜! それより、あなたが前のリーダーから奪った魔具を
返してください〜!!」

 やっぱりのほほんと言い放つセフィ。
 それを聞いたおっさんは懐から何か取り出してセフィに投げた。

「ほれ、これだろう」

「ほえ〜?」

 おっさんの投げた何かをキャッチしてセフィが間抜けな声……普段から間抜けと言えば間抜けだが
……そんな声を出す。
 セフィの手元を覗き込むと綺麗な細工の施されたピアスがあった。

「え…何で〜?」

 素直に返されたのがよほど不思議なのだろう、聞かずにはいられないといった感じだ。

「当たり前のことを聞くな、そんな物私には必要ないだけだ。それよりもエリナだ、見たところ
どこか違うところに移動したらしいが…貴様らは何をしたんだ?」

「そんな物って―――むぐっ!?」

 なおもおっさんに挑戦的なセフィの口を塞ぐ。

「俺たちがやったんじゃない。村の奴らだ」

「なるほど…わかった。一応あらかたの事情は知っているのでな、疑って悪かった。
私の名は先ほどそこの小娘が言ったとおりだ。ああ名前は言うな、どうせ覚えても意味がない」

「ふむ〜〜〜〜〜!(小娘じゃない〜〜〜!)」

 バタバタ暴れるセフィを止めていると、デニスが話してきた。

「カリム…周りを見ろ」

 デニスの言うとおり周りを見ると、自崩していって地面だけになっていた部分からまた樹が
生え始めていた。

「増殖までできるのかよ」

「なんら問題ではない、私はエリナを助けに行くが貴様らはどうする」

「どうして助けようとするんだ?」

 ふと疑問に思って聞いてしまったが
 それはきっとおっさんにとっては愚問な質問でしかなかったのだろう、
迷うこともなくすぐに答えてきた。

「私が始祖魔法使いだと知らなかったとはいえ、私が理想を求め愚かな者になってしまったということを
知らなかったとはいえ………私を恐れず、私を話し相手にした娘だからだ。で、貴様らはどうする
のだ?」

 そう答えるおっさんの真剣さはこれでもかというくらい伝わってきた。
 厄介なことになど首を突っ込むつもりは毛頭ない。
 だが―――

「1泊2食の恩があるしな、いいぜ俺も協力するよ。なに、4人いれば何とかなるって」

 その言葉にデニスはうんうんと頷いていたが、セフィはピタリと止まってしまった。

「いふぃ、ぬぃ、ふぁん………ふぃ〜?(1、2、3………4〜?)」

 正面のおっさん、次いで口を塞ぐ俺、近くのデニスと指差し、最後に自分を指差した。
 そして俺をジーッと見てきたので、口を塞いでいた手を離す。

「私も数に入ってるんですか〜?」

「おう。ここまできたんだ放っておいたりしないだろ?」

「うう〜……わかりました〜」

「決まったみたいだな」

「ああ。だけど具体的にはどうすんだ? エリナの居場所はわからないし…この森自体が厄介な感じだし」

「片っ端から森を消滅させていく、貴様らはエリナを見つけたらすぐに保護しろ、いいな?」

 確かに俺とデニスができるのはそれくらいだ。
 俺もデニスも頷いた。

「よし………滅せよ」

 杖をかざして呟くと、先ほどのようにまた森が自崩していった。

「小娘、お前も早くしろ」

「だから小娘じゃ……あう〜わかりましたよ〜」

 ブツブツ言いながら手をかざす。
 魔力の光だろうかが現れ陣を描き出す。
 それが3っつ瞬時に描かれ、重なりあった瞬間―――

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガアアアンッ!!!!!

 大爆発が起きて辺り一面を綺麗に吹き飛ばした。

「ほう、"3重陣"(トリプル)が使えるあたりはさすがといったところか」

 おっさんは、すこし興味らしいものを示していたが、俺はそんなことより
 ―――――2人でも大丈夫なんじゃねえの?
とか思ってしまっていた。


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