コンコン
「はぁ〜い。どうぞ〜」
扉が開く音がする。ついで――――
「こっのバカー!!」
と怒ったような声。そしてバタンと扉の閉まる音がして
殴られた。
「いたいよぉ〜オリよん」
「痛いじゃないわよ! 何で着替えてるのに入れなんて言うのよっ!! セフィ!?」
セフィリルウス=アンスエイト=クラン――――――
大陸"ガウルセンシズ"に存在する各国家から数名の魔法使いを集め結成された組織"ジックロウサー"
のリーダーを務め"魔の極み"の称号を得ている。
とまぁ私という人物の簡単な説明と言うと世間ではこうなっているらしい。
そんなことは別にどうでもいいけど。
そして私を略して呼ぶ彼女はオリエナ=ファーブスィン。通称オリよん。
幼馴染とかではないのだが、組織の中で唯一気の揺るませられる相手かつ秘書みたいなことをしてくれてる人だ。
あ、着替え着替え――――――
着替えっていえば…怒鳴る前にきちんとドアを閉めるのも彼女らしい。
「ちょっと聞いてるセフィ?」
「うん、聞いてるよ〜。で、何で先日解決した"ゴースト化現象"についての資料とかがあるの?」
「…………全然聞いてないじゃない……!!」
「じょ冗談だよ、やだなぁ〜。一応うちの管轄にもなるから"ディスウィリウム"から事件を解決した人
が書いた報告書の写しを送ってもらって、ついでだから資料にまとめたんだよね」
「…何だ…ちゃんと聞いてたんだ」
「当たり前じゃない」
と、資料は読んでたけど報告書は見てないし眼を通しとかないと。
―――――――よかった〜当たってて
実は自信無かったんだよね〜………って、何コレ?
「オリよん〜。この『なお任務途中で旅人Aと盟友Bに協力を頼んだ――』って何?」
「それは私も相手側に聞いたんだけど『本人がどうあってもそれ以外は語らないから我々もよくわからない』
って言われた」
「ふーん…」
旅人はわからないでもないけど…盟友ってなんだろ?
あ〜そういえば―――――
「お腹空かない? オリよん」
「は〜…何でいきなりそんな話になるの!?」
「だって〜…もうお昼だよ?」
「それはアンタが寝過ごしただけ! ついでに言うなら朝に朝食持ってやって来て、何回も何回も何回も何回も
なーーーーーーーんかいも起こしたのに起きなかったんでしょ!? で、昼になって来て見ればやっと起きて着
替えの途中!! ただそれだけでしょっ!!!」
あう〜、オリよん急にご機嫌斜めモードだ……………怖い。
「だいたい何でアンタみたいなポケポケしたのがリーダーなの? 国の考えることはさっぱりだわ!!」
うわぁん〜、今日は震度5強だよ……………!
でも私はポケポケじゃないよ〜。そこだけは否定だ〜〜!!
「でも〜…朝は弱いんだもん〜…オリよんだって知ってるクセに〜! オリよんの意地悪〜」
いいんだ〜こうなったら悪になってやるんだから〜!
そんで魔法であちこち派手にぶち壊すんだから〜!!
「はぁ……わかったわよ。わかったからその机に「の」の字書くのやめなさい! ……ほら
サンドイッチ、食べましょ」
と…どこに持ってたのかバスケットを机に置く。
ううううううううう〜!!
「オリよん〜。大好きっ!」
「ちょ! いちいち抱きつく事ないでしょ!? 離れなさいぃっ………!!」
「大変ですっ!!」
バンッ!!
と派手に扉が開く前にオリよんから離れて席に戻る。我ながらすごい動き〜。
「どうしたんですか〜?」
「はい! 始祖魔法使いの反応が出ましたっ!!」
「本当に!? 反応が出たのはいつ?」
「つい先程です! え〜とそれで―――――」
「ごくろうさま。とりあえず私たちで軽く話し合うから他のところにも報告してきてちょうだい」
「はいっ! 失礼します!!」
来たときと同様の勢いでドアを閉めて行ってしまった………って
何で私が会話に参加してないの?
何か…納得いかないなぁ………
「で、セフイ。どうするの? まさかメンバー全員出撃とか?」
「ううん。私が行くよ〜?」
アレ? 何でオリよん驚いてるんだろう?
「セフィが直接行くの!? …本気?」
「本気だよ〜。みんなで行くより私1人の方が楽でしょ?」
「だからってわざわざリーダーのアンタが行く事は――――」
「うん。でも前のリーダーと約束してるんだ〜。だからちゃちゃっと行ってくるね〜。あ、準備してくる間に
サンドイッチ少し包んどいてくれる? 行く途中でたべるから〜」
「はいはい……わかったわよ。さっさと準備してきなさい」
「うん」
そう言って部屋を出ようとする。
完全にドアが閉まる直前――――――
「仕事はちゃんと残しとくからね」
………………………
あ、バレてる。
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