朝。眼の前には鉄の扉。
 例の地下通路の扉だ。確かに鍵はこちら側からはずせる。

「うし、んじゃ開けるぞー」

「「ま……待ってくれ」」

 アルとデニスの声がピッタリとハモる。2人とも脱力とゆうか…ぐったりしている。
朝まで寝もせず話してるからだバカ

「自業自得だ。いいから開けるぞ」

後ろから「4年前はこんな奴じゃなかったのになぁ」とか「……………ひどい」とか
 聞こえたりしたけど無視。鍵を外す。
 ギギィなんて重苦しい音とともに扉を開ける。2人は眠そうではあったが扉を開け始めると途端に
シャンとした。最初からそうしててくれ…
 扉が開く…………………思考停止
 だが体は見事に反応して扉を閉めようとしている。気づけばアルとデニスも扉を閉めるのを手伝って
いた。
 すぐに扉を閉め、鍵をかける。………………

「……最初の作戦でいこう」

「「異議なし」」

 満場一致ということでさっさと外に出よう。こんなゾンビの壁ができてるような地下通路ダメだ。
 そして教会の外に出る。デニスと俺が大勢のゾンビに襲われたことを考えると、ここのゾンビどもは
朝でも平気で活動するだろう。気づかれないうちに城まで行かねえと。

「よし行こう」

「ああ」

「………(コク)」

 途中アルが酒樽倒したり、デニスが平然とゾンビの群れに突っ込んだりと問題を起こしたりしたが、まぁ
軽傷だけですんで城までたどり着いた。ゾンビがいないのを確認して近くの部屋に入り作戦会議2(要:小声)
を開くことにした。

「さて、ここまで特に問題なく来れたけど、どうする?」

「「王室まで強行突破」」

 オタク2人の意思の疎通が凄いのはいいんだが、強行突破って……何のためにここまでコソコソ来たんだ
かわからなくなるだろうが。

「でもそれは辛いだろ? "ゴースト化現象"の原因がよくわからない状態で体力使うのはよくない」

「「大丈夫だ」」

お前らのどの口がそんなに自信満々な台詞をはかせるんだよ……
 かといって何かテンション上がってきてる2人を止める自信がなくなってきた

「じゃあ、お前らが前衛で敵を倒しつつ進むと」

 そんな適当な作戦でいざ王室ってことになった。そこにたどり着くまでの道はいたって単純で今いる部屋から
すぐそこに見える階段をずっと上った終着点が王室だ。見取り図どうりなら王室は4階ってことになる。
 だが、意外にもゾンビの襲撃はなかった。城の地下通路にさえ大量にいたのに、1体も出てこなかった。
あっさりと王室の扉の前までたどり着いてしまった。

「割とあっさりしてたな…どう思うアル? デニス?」

「確かに…おかしいな」

「何かあるというだけだろう」

「それもそうだけど…んじゃ俺とアルとで中に入るから、デニスはそこでゾンビが来ないか見ててくれ。
もし何かあれば呼ぶしすぐ来れるだろ?」

「わかった。気をつけてな」

 おう、と返事をしてアルと中に入る。ざっと見て特にこれといったのは……

「困るな、入る時はきちんと挨拶をしてくれないと」

 身構える。声がしたのは前に見える玉座。今は子供が座っている……さっきまで誰もいなかったのに。
 子供は屈託のない笑顔でこちらを見ている。

 その瞬間………
          本能が何かを叫んだ

「アルッ!!」

 叫んでその場を跳ぶ。その場所を崩れた天井の瓦礫が襲った。
 転がって体勢を直しアルを見れば、既に剣を抜いて子供に斬りかかっていた。
 横薙ぎの一振り。子供の首を切り落とす軌道。だがしかし、その軌道は子供の首の手前で止まっている。
 よく見れば子供の小さな手の小さな指が1本。剣を受け止めていた。

「無礼な人だね」

 子供の空いている手がアルの体に触れる。次の瞬間にはアルが俺の近くまで吹き飛ばされていた。

「アル!」

「だ…大丈夫だ」

「だけどあの子供…」

「間違いない…"ゴースト化現象"の原因だ」

 銃を抜いて子供を見ると、玉座から立ち上がり先ほどとは違う冷徹な笑みをしてこてらを見ていた。
そして口を開いた

「ようこそ…王になって5日で人が来るのは意外でした。だが来たのなら多少は楽しませてください…
我が名は死神の王『リッチー』…あなたがたも名前くらいは知っていると思いますが?」

 台詞が終わると同時。4階が吹き飛んだ。辺りは何もなくそれこそ廃墟のようなものだ。
 おまけに階段の部分は瓦礫で埋まっている。デニスのことだし死んではないだろうが、助力も期待できない。
 死神という魔族の中での王リッチー。それが今眼の前に…どういうわけか子供の姿をして立っている。
 勝てるかどうか怪しいもんだ……無理しないで退けと本能が語りかける。
 頭ではわかっている
       そう、頭ではわかっているのに
                   なのに………!!
 俺とアルは死神の王リッチーに向かい駆け出した。
 何のアテもなく、何の勝機もなく、奴に勝てるかどうかわからない程度の力量で
 だが俺たちは……戦いを挑んでいた。


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