俺がリッチーの左側に、アルが右側に回り込み、挟み撃ちにする。
 もちろん銃は使えない。へたしてアルに当たったら大変だ。
 先に俺が駆け出す。そのまま足を狙って蹴りをいれるが、リッチーは当然のように上に跳んだ。

フェイント

 既にリッチーが跳び上がった位置には同じく剣を構えながら跳び上がっていたアルがいる。
 アルがそのまま剣を振るう。刹那。アルが後ろに跳んだ…最初にアルを吹き飛ばしたのと同じ力だろう。

そして…それもフェイント

 これから先はリッチーもアルも予想していなかった出来事。リッチーは人間の姿なせいか万有引力の法則に
従い落下してくる。床を蹴って後ろに跳び、銃をリッチーの落下地点にあわせ構える。

「青の契約によりうまれし鞭!」

 弾が当たった場所からリッチーに向かい鞭のようなにうねる激流が襲った。さすがにリッチーも予想できな
かったようで直撃だ。

「アル、無事か!?」

「ああ。だけどお前それは?」

「それは後だ!」

「まったく驚きだ」

 声が聞こえるとほぼ同時。リッチーを襲っていた激流が消えた……いや、かき消された。

「魔法に酷似してはいるが、まったく別の力だね……何者だ貴様?」

「答えてやると思うか?」

「それもそうか。でもよかったよ、少しは本気でもよさそうだ」

 リッチーが手をかざした、その手のひらから黒球が現れる。

「くっ!」

 走った。そのすぐ後を気持ちのいい爆発音が叩く。そのまま走る。続く爆発音。
 としばらくそれが続いた矢先、眼の前に黒球が現れた………なんだと?

「手からしか撃てないと言った覚えはないけど?」

 クスクスと笑い声。いきなりの事に止まったのがマズかった。せめて横に跳ぶべきだった…もう黒球は
反応しても避けられない位置まできている。

「伏せろカリム!!」

 言われるまま伏せる。何かが頭の上を通り過ぎる感覚、続けて眼の前に人影……アルだ。
 アルは俺を跳び越えた勢いのまま黒球を斬り裂いた……正確には斬った黒球がそのまま剣に吸い込まれた。

「へぇ、『魔具』か。見たところ吸収<ドレイン>の能力のある武器らしいけど……………妙だな
手加減したとはいえ、ただの人間に吸収しきれるなんて」

「これくらいできなきゃ"ソールド"のNoは名乗れないさ…行くぞ! カリムは援護を!!」

「わかった!」

「フフ。最初の客にしては上等じゃないか…」

 いくつもの黒球が現れてアルにふりかかる。アルはそれを一息で斬って吸収する。
 そのまま斬りかかる。リッチーは衝撃波で吹き飛ばそうとするが、すかさずアルに吸収された。

「そんなのくらうの2回で充分だ!!」

「ハハハ! 訂正するよ!! 異常な吸収力の君といい変わった魔法を使うそこの人間といい、久々に私の渇き
を癒してくれるよ!!! もっとだ!! もっと楽しませろ!!!!」

 アルとリッチーの攻防が続く。正直ここまでくると逆に援護できない……
 見ればアルの周りの黒球の数はどんどん増えていくが、アルも襲ってくるとこから片っ端に吸収していく。
 リッチーはリッチーで黒球を出すのに必死で恐らく俺のことは忘れかけているだろうが、俺が動けばきっと
俺が攻撃される。自慢じゃないが俺にはアルみたいな芸当はできない。
 と、アルが足を滑らせた。襲ってくる黒球は吸収していたが、リッチーはその隙に一際でかい黒球をアルに
叩きつけようとしている、すかさず黒球に標準を合わせる。

「拡散の使命を受けし兵よ、行けっ!!」

 アルに当たる手前で弾丸は黒球に命中…ソレを霧散させた。続けてリッチーに向かい2回発砲する。

「アハハハハハハハハ!!」

 何が楽しいんだかわからないがリッチーは子供のように笑い動かない。
 迫る弾丸。
 動かない標的。
 突如現れる壁……魔法障壁。少し前に戦ったゴーレムの使っていた何倍もの出力だ。
 何の呪文も使わない普通の弾丸はそこで消えた。

「君のソレは何なんだ? 不思議だ…本当に不思議だよ。おもしろいんだけど…何か危険だなぁ…
やはり君から殺そうか、吸収する方はいま君が助けなければ死んでいたワケだし」

 魔法障壁が消える。かまわず撃つ。

「赤の契約によりうまれし鉄槌!!」

 リッチーは笑って魔法障壁を出現させようとした。
 が、魔法障壁は出現することなく弾はリッチーに命中する
 爆発。
 俺はしゃがんで様子を伺った。同じようにして様子を伺いながらアルがこちらに近寄ってきた。

「うまくいったなカリム」

「ああ。まさか魔法障壁まで吸収するとはな」

「そういうことか」

 声は背後。振り向く…よりも早くアルが吹き飛ばされた。そしてそれを認知するより早く俺も吹き飛ばされた
 しまった………今ので銃がどこかにいっちまった! マズイ。

「これで君は変な魔法を使えないハズだ。さて人間種族を少々舐めていたらしいね……まったく最初に
呼び出された時点で人間に対して少し警戒すべきだったのに…迂闊だったよ」

「呼び出された……だと?」

 そんなバカな…下っ端の死神ですら呼び出すのに普通の魔法使い5人はいるのに、その王だぞ? いま眼の前
にいるのは。いったい誰がどうやって……?

「フフ…わからない? それもそうだろうねぇ私も最初は驚いたよ。でも答えはいたって簡単だったよ…
私を呼び出したのは他でもない……この国の人間だ」

 な………っ!?
 この国の人間が? 死神の王を?
 見ればアルも驚いていた……けど…何のために?

「何のために? …って顔だね2人とも。でもそれこそ簡単だよ、私が呼び出されるなんて理由他にないだろ?」

 そう言いリッチーは今までで一番愉快そうに笑った。

そう、復讐のためだよ


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