「ま、話だけは聞いてやる」
あれから数時間。デニスが通路の中から器用に大剣を振り回すあたりまでバトルが進んだのだが
さすがに疲れてきたので、しかたなく話だけ聞くことにした。
「ふむ。俺は仕事を手伝ってもらいに来たわけだが」
「そんなこと言ってたな。でもオマエはパートナーがいるだろ?」
そう、同じトレジャーハンターのパートナーがいるハズだ。名前は忘れたが、確かにいた。
「今回はちょっとした事情があって1人でやらねばならん」
「事情?」
「ああ。少し借金を作ってしまってな」
「ふーん」
結構そういう単語には遠い奴だと思ってたんだけどな…意外だ。
「でも何でまた借金なんかを?」
「ああ、病院の治療費が高くついた」
「病院って……それこそ何で? オマエって病院なんかと縁の無いやつだろうが」
「そんな事はないぞ。…どこから説明したものか……」
「適当なとこからドウゾ」
「…先日アイツと遺跡から宝を発見したんだ」
アイツってのはパートナーのことだろう。
「それで?」
「で、帰る途中アイツが持っていた宝をゲバクスの巣に落としたんだ」
ゲバクスって群れで行動する小型の肉食獣だったっけ………まさか…
「その巣に落ちた宝…取りにいったのか!?」
「いや、正確には「取って来い!!!」と蹴飛ばされた」
…………鬼だ。鬼がいる。
「で、無事宝は回収したんだが病院に一週間入院するハメになった」
「よくそんだけですんだなぁ」
たしか人を食ったら3秒で動けなくしてしまうくらい凶暴な獣なのに
「医者もオマエは人間ではないと褒めてくれた」
いや、絶対褒めてないだろソレ…
「で…借金ができたと。でもそれならパートナーだって責任あるだろ」
「うむ。それが「私の宝は私の物、アンタの宝も私の物。だから宝を取りに行かせたのは責任あるけど
それで怪我したのはアンタの責任なんだからアンタが金払いなさいよ」と言われて」
最低だ。鬼なんて表現生ぬるい。
「オマエ……それで無茶苦茶とか思わなかったのか?」
「………………………………無茶苦茶なのか?」
生粋のバカだコイツ。救えない、救いようがない。
さすがになんか、かわいそうになってきたなぁ………
「でも治療費払ってもらうだけでもしてもらえばいいだろ?」
「そう思っていたのだが退院する前日に行方をくらました」
コイツも何でそんなのとパートナーしてるんだろう?
いや、マジで。う〜〜〜〜ん…ハァ〜
「しょうがねぇな、詳しくは途中で聞くとして……手伝ってやるよ」
「そうか。助かる」
「準備するからバリケード片付けておいてくれ」
そう言って部屋に入る。ああ、バイトやめねぇと……
でもさすがにアイツがかわいそうだし…今回はしかたねぇかぁ…
準備っていっても銃と銃弾、それに少し金を持ってくくらいでいいだろう。
食料とか必要な物は近くの街なりで買えばいいだろうし
「おし、行くか……って! 何してんだオマエーーーーーーーーー!!!!!」
部屋から出て目撃したのは、これでもかってくらいに切り裂かれたバリケード(日用雑貨含む)
一仕事終えて満足そうに頷いているデニス。驚いてこちらを見ている。
「何とは? 言われたとおりバリケードを片付けたのだが?」
「真顔で何をぬかしてやがるかテメェ!! 何で切り裂くんだよっ!!!」
「………斬ったら駄目なのは外から中に入る時だけじゃないのか?」
「数時間悩んで学習したのはそれだけかーーーーーーー!!!!!!!!」
右のストレートを顔面に叩き込む。
「痛いぞ。頭がおかしくなったらどうする気だ?」
「おかしくなれっ!! そうすりゃ反対にマトモになるわいっ!!!」
「俺は正常だぞ?」
充分いかれてるわアホーーーー!!!
あああ……家具も何もかもズタズタじゃねぇか!!
ううううううう………
「どうした? 何故泣いている?」
オマエのせいだ! オマエの!!
NEXT
TOPへ