「は…くしゅっ!」
 う〜…昨日は薄着のままで寝たからな〜
 こういう朝はスープだ…そんなことを考えドアを開ける。

「ふむ、朝は早いほうなのだなカリム」

 !!  声のした方を見る。茶色がかった黒髪、赤い額当て、茶色の焦点の合っていないような眼。
 見てるこっちが熱くなりそうな全身を包む黒いマント。近くには鞘におさめられた大剣。
 ああ…間違いない。俺の知っている人物だ。それもあまり関わりたくない分類の…

「何のようだ? デニス」

「ああ、仕事を手伝ってもらおうと思ってな」

「却下だ帰れ」

 この男…デニス=ヴァンテバスは前に仕事で知り合ったトレジャーハンターだ。
 少し思考がいってしまった奴なので好んで関わろうとも思わない。
 今は仕事がないため代わりに下の街でバイトをしている。昼から夜中までだが夕飯がでるのでありがたい。
 そのバイトを失うのは現時点で非常に辛い! ので今回の誘いは即答却下だ。
 だいたい朝から人の家のソファーで待たれても……って〜…こいつどうやって入った…

「うおうっ!!?」

 デニスに聞こうと出入り口のドアを見て驚いた。こいつ…ドア斬りやがった!!

バキッ

「……痛いぞ? カリム」

「アホかっ!! 人の家のドア真っ二つに斬っといて何考えてるんだテメェ!!」

「………………………駄目だったのか?」

 この野郎…本気で考えてやがったな………!!

「この非常識が!! 出てけーーーーーーーーーっ!!!!」

 外に殴り飛ばして剣を投げつける。再起不能なうちにバリケートをっ!!
「何故…駄目なのだ………?」なんて本気で考えているバカは放っておいて…これでよし!
 さーてと、朝飯、朝飯〜



「カリム…何故バリケートがしかれているのだ? 入れないぞ」

 朝飯から3時間。雑誌を読んでたらそんな声が聞こえた。まさか今まで悩んでたのか? ……アホだ。

「入るな。むしろ帰れ」

「………ふむ」

「斬ったら撃つからな?」

「……………………ドアじゃないのに駄目なのか?」

「駄目に決まってんだろうがっ!! さっさと帰れやっ!!!」

 あああああああああああああああーーーーーっ!! アホだ! 真性のアホだっ!!
 それっきり声はしない………帰ったか?ふぅ〜〜

「理由くらい聞いてほしいのだが」

「うおおおおおおおおおおおっ!!!」

「どうした? 顔色が優れないようだが」

 こいつは〜〜〜〜っ!! 床下からかよ!! ビビッタ〜………………って!!

「オマエーーーー!! 何で非常用に俺が造った通路を知ってやがるっ!!!!!」

「………………………直感だ」

「舐めんな、コラ!!」

ゴスッ
 この通路は床下までは下から梯子で上がってくる形だが、デニスを落とすように…蹴る。

「やめろカリム…落ちるじゃないか?」

「ああ! 落ちろ!! そのままここと入り口封鎖してやるわっ!!!」

「いや困るぞ。とりあえず落ち着け」

ゴス、ガス、ゴス、ゴス、ガガス、ゴス、バキッ、ゴス、ガス…………
 問答無用。蹴る。ただひたすらに蹴る。ときどき拳も交えながら蹴る。

「いたい、いたいぞ」

「うるさい!! このっこの!!」

「そろそろやめろカリム……! 手が痺れてきた」

「さっさと手ぇ離して落ちろ!!」

「……ではどうしろと?」

「帰れっつの!!」

 ああああああーーーーーーっ! もう!! この非常識の頑固バカーーーーーー!!!!
 だいたいコイツと知り合った仕事の時もえらいめにあったんだ!! 絶対いやだ!!!
 それにバイトをやめるわけにはいかねぇんだ!

「とにかくおちろおぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!!!!!」

 しばらく平和に暮らすんだ、俺は!!!!


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