久しぶりに出会ったカリム=ウォーレンを見たとき
ああ―――――
なんて幸せそうなんだろう――――
不覚にもそう思ってしまった。
そして自分がそう思ってしまった理由もはっきりしてしまっているので尚更そう思った。
つまりあいつは外の世界の人間になっていたということだ。
俺たちのようにただ任務という形だけで外の世界の人間になるのではなく
何も縛るもののない自由を持った人間になっていたのだ。
そしてそれは自分を誤魔化して手に入れたのだとカリム本人は気がついていた。
だから連絡をよこさなかった、いや…よこせなかった。
カリムを問い詰める最中にその事に気がついて追求するのをやめた――――
頭の隅でだとしても4年間悩み続けていた奴にどうしてそんなことができようか?
できるはずがない。
だから自然に振舞った。
もっとも………あいつはそんなことにも気がつかないんだろう、そういう奴だった。
暖かい日差しが降り注ぐ通路を歩き食堂へ向かう。
伝言のメモがきちんと読まれていれば彼女がいるはずだ――――
食堂に入る。
朝食のピークが終わったばかりなので人はほとんどいない。
いるとすれば――――俺が呼び出した彼女―――――ファムちゃんくらいだろう。
「や、ゴメンね。急に呼び出したりして」
「……いえ、大丈夫です」
相変わらずの覇気のない声。無表情の顔。
「それで………用件はなんでしょう?」
「ああ、うん。すぐ済むんだけどね、結構重要っぽいかな…君にとって」
表情こそ変えないもののファムちゃんの眼は疑問を投げかけていた。
「それは…どういうことですか?」
「うーん。まどろっこしいのは嫌いだから単刀直入に言うよ?」
と、ファムちゃんに顔を近づけ耳元でささやいた。
―――――――「カリムが生きてたよ」―――――――――――と。
顔を話す。
お! 驚いてる驚いてる。
予想どうりの反応だ、よしよし。
ファムちゃんはしばらく驚きで呆然としてたがハッと気づいて詰め寄ってくる。
向こうが喋りだす前に手で制して口を開く。
「悪いんだけど詳しい事は教えられない。あいつのためにもだ」
それを聞くなり落ち込んでしまうファムちゃん。
だが無表情の感情のなくなっていた眼は確実になくした感情を取り戻していた。
「でも……生きてるんですね!?」
「うん、それは確かだよ。あ……そうだコレ――」
とポケットからメモ用紙を取り出す。
盟友――――デニスから貰った額当てに貼ってあったものだ。
走り書きの汚い字。誰が誰にむけて書いたのかは一目瞭然だ―――――
それをファムちゃんに渡して
「くれぐれも内緒にね」
と念を押して食堂を出る。
食堂を出る直前ちらりとファムちゃんを見ると、メモ用紙をとりつかれたように見ていた。
ま、あいつのことだし傷つけるようなことは書かないだろう――――
そう思い、また足を動かした。
そして特に何があるわけでもなく昼過ぎ。
今回の仕事の報告書を提出して自室に戻ろうとしていた最中―――
「アルーーーーーーーッ!!!!」
と。聞きなれたサリスの声がした。
何故だろう?――――――怒りながらこちらに走って迫ってくるような感じがするのは…
「あんたファムに何したのよーーーーっ!!!!??」
走ってきた勢いそのままで、とび膝蹴りをかまされる。
推定5pは浮いて倒れた。
「コラ! 寝るなっ!!」
お前がやったんだろうが………などとは口が裂けても言えるはずなく
なすがまま襟首をつかまれた。
「あんたっ!! ファムに何したのよっ!!! 答えなさい!?」
「ごめ…苦し……な何なんだよ…何のことだあああああ〜?」
「ふざけないで! あんたが朝ファムを呼び出したのは知ってるの!! ファムったら帰ってきた後
ずーっとにやにや笑って、どうしたの? って聞いても『何でもない』ってにやーってしてるのよっ!!」
「わわわ…わかったから…ガクガク揺らすなああああああああ〜」
パッと手を離される。ゲホ! ゲホゲホ……あ〜苦しかった……
「ったく。確かにファムちゃんを呼び出したけど何でそれだけで殴られるんだよ?」
「決まってるじゃない! あんなだったファムが急ににやにや笑うなんてあんたがとんでもない酷いことを
しておかしくなったとしか思えないでしょ!!」
「ちょっと待てよ!! 俺は何もしてないぞ!! 無罪だっ!!!」
「じゃファムになにしたのよ?」
「お土産をあげただけだよ!」
正確には違うが――――間違ってもいないだろう。
「お土産ぇ〜〜? どんな?」
「それは言えないけどさ…とにかく! お前が言うような酷いことなんてしてないっ!!」
まだ言いたい事はあるみたいだったが一応は納得してくれたらしい
「それなら…まぁいいけど。あ、殴ってゴメン」
と言ってサリスはテクテク歩いていった。
あ〜殴られ損だ……にしても、にやにや笑ってた………か
俺たちがどんなに笑わせようと、楽しませようと手を尽くしても駄目だったってのに
カリムは走り書きのメモ一枚でそれをやっちまうんだから――――――
「少しムカツクかなぁ?」
と窓を見る。
暖かな日差しはかわらず降り注いでいる。
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