デニスに助けられながら立ち上がる。
 体中で痛くないという所はない。あちこちが悲鳴を上げている。
 ふと…さらさらと体が崩れていっている右半分だけのリッチーを見た。
 何も感じさせないような顔をして自分が消えゆくのを待っている。
 そんな姿を見て唐突に理解した―――――――
 こいつは確かに人々の怨念なんかで呼び出されたのだろう
 だが本人が言っていた制約なんてものは初めから存在していなかった。
 こいつはただ不完全な形で召喚されてしまったんだろう―――
 言うなれば呼び出した人々の都合のいいように。
 だから人の姿を保とうとしたのだろう、リッチー本人も気づかぬうちに。
 ―――――――――――と。
 そんなことを理解して何がどうなるわけでもないが哀れむことはできた。
 人々にいいように扱われ、自分が不完全だということにも気がつかない
 それは―――それはなんて哀れだろう。
 だが不完全だろうが完全だろうが迷惑なのに違いはない。

「2度とくるんじゃねぞ、クソ死神」

 リッチーの半身があった場所に向かい呟いた。

------------------------……で-----------------------------

「どうやって下に行くんだ?」

 そうそれが問題だ。デニスは城壁を登ったと言っていたが
できるか、んなもん
 というわけで会議である。幸いアルもひどい怪我はなかった。
 が、だからとていいアイデアが出るわけではない。
「俺にいい考えが―――」

「ちなみに飛び降りて剣を壁にさしながらガガガガガガガ〜ッ!! って下りていくのは却下だからな? だいたい
それじゃあ俺とアルは無理だろうが。アルの剣じゃ途中で折れるし、俺の銃は論外」

 それっきり黙りこむデニス………本当にその案でいく気だったのかよ…
 あ、銃といえばデニスが都合よく拾っていてくれた。その点は感謝だがソレとコレとは話が別だ。

「せめて下の階に行ければな…」

 アルがポツリと言う。まぁそれができれば会議なんて――――

ドガンッ!!

 やたら派手な音。
 見ればデニスがご自慢の漆黒の大剣で地面を砕いていた。
 砕かれた場所にはきれいに穴。

「これでいいか?」

 ……………あのなぁ
 そんな事ができるなら最初からしろっ!!
 本当はグーで殴りたかったがそんな気力もない。
 早く下りよう。

 ――――――――――――無事生還!!
 リッチーが派手に吹き飛ばしたのは4階だけで下の階はほとんど損傷はなかった。

「あー疲れた。いったん教会でやすもうぜ、荷物も取りに行かないといけないし」

「おいカリム。お前たちの仕事はいいのか?」

 アル………なんでそう疲労の倍増することを………

「心配するな、もう回収して教会に置いてある」

 ――――――――は?

「もう回収しただと?」

「ああ。見取り図のおかしなところにちょうど隠し部屋があったので見れば探していた宝だった」

 なんだ、んじゃ問題ないじゃ―――――――――待て。
 待てよ……ってことはコイツ―――

「のんきに宝探しして丁寧に教会まで置きに行ってから俺たちのとこに来たのか?」

「…………駄目なのか?」

そんなことしとる前に俺とアルを助けに来んかいっ!!!

 疲れも痛みも無視して体の動くまま右ストレート。
 床に倒れたデニスはきっかり3秒後にむくっと起き上がる。

「…痛いぞ?」

 ああもう〜………相手にしててすっげぇ疲れる。
 疲労の3倍増しだぞ…ったく……

「もーいい。終わったんなら早く帰ろう…」

「そーだな」

 1人疑問符を浮かべているバカがいるが放っておいてアルと2人で歩き出した。
 外に出るとまだ太陽は高い位置だった、昼を過ぎたくらいか。

「俺はここでお別れだな」

 とアル。

「いきなりだな。でも荷物は?」

「使い捨てのサバイバルキットだけだし問題ないさ。それよりデニス」

「何だクイス?」

「いやもしよければコレやるよ」

 と額当て(ヘッドギア)を外す。
「ならば俺も」とデニスも額当て(本当はヘッドギア)を外す。
 白昼の眩しい太陽の下で
 アルとデニスがお互いの額当て(だから! ヘッドギアだって)を交換する。
 おお――――――――――

今までのシリアスな戦闘とか台無し

 何だこのオタク2人は
 いつのまにそこまで親睦を深めた?
 そんな疑問もよそにアルは爽やかに去っていった。
 同じく爽やかに見送るデニス。
 何かアルがいろいろ言った気もするがそんなことよりも1つの事で頭がいっぱいだ

そんな爽やかになれることだったか?いまの

 残念なことに「絶対なれないって!!」と同意してくれる人物は
 この場にいなかった―――――――


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