光の刃が消える。
 後に残ったのは体中いたるところに穴が空き人の形をかろうじて残しているリッチーだ。

「お…の………れぇ…………っ!!!」

 ――――――喉なんてもうないハズなのに

「往生際が悪いぞっ!!」

「なめ……るなっ!!!」

ボコボコ ボコボコ
 奇妙な音をたてながら再生を始めるリッチー。
 させまいと走り出して―――黒球が落ちてきているのに気がついた。

「クフフフッ………死ね…………ぇ」

 まだ穴だらけの腕を振り下ろす。
 黒球の落ちる速度が速くなる。
 俺の『銃魔法』じゃあの大きさはどうにもできない。
 どうすればいいか考える間に黒球は迫ってくる。
 万事―――――――――休すだ……

「諦めるにはまだ早いぞ、カリム」

「アル!?」

 見ればアルが剣を構えている。
 まさか―――――――
 アレを吸収するつもりか? 無茶だ。だいたい…

「アル! お前吸収できないんじゃあ――」

「再生に力使う分、俺に魔力吸わせ続けることができなくなったんだろう。もう大丈夫だ」

 そして黒球めがけてアルが跳んだ。
 剣が黒球に触れる。
 ――――刹那
 ありえない光景だった。
 小型隕石程の大きさの黒球がわずか一瞬で
 文字どうり消えた。

「な…………!!」

 声を出したのは俺かリッチーか…見ればリッチーはもう再生していて俺と同じように驚いていた。
 とにかく驚いて放心している今のうちに…!!
 銃弾を投げる。
 リッチーの側まで飛んでいき、呪文を唱えようとした時。
 弾丸が弾けて無くなった。

こんなことがあってたまるかああああああああっ!!!!!!!!

 衝撃。
 城から街まで揺るがしかねない衝撃。
 吹き飛ばされる体。
 あちこち転がる体。
 もうどこを転がっているのか
 縦に転がっているのか横に転がっているのか
 何もわからない
 それくらいの衝撃。
 気がついたときにはリッチーから随分離れた位置まで転がっていた。
 おまけに体中が痛いし、折れた肋骨もだいぶ痛んできている。
 アルも随分離れた位置にいる。

「人の心配より自分の心配をしたらどうだ?」

 ―――!!
 上から背中に加わる衝撃。

「ぐがっ!!」

「君は放っておくと危険だと認識した。先に殺す。でも簡単に殺さない。ゆっくり殺す」

 足。腕。背中に頭。
 次から次へと衝撃が加わる。
 本当にゆっくり殺すつもりらしい。
 くそ―――――

「あと……一撃…………ぐああっ!!!」

「確かに再生に力を使いすぎた。あと一撃……真っ二つにでもされたら私は死ぬだろうね。だけどもう
そんなことできる人間はいない。あそこで寝てる仲間には期待しない方がいい、しばらくは動けない」

 くそったれ…
 ここまできてこれか!
 せめて―――
 せめてこの野郎を道連れに――――!!

「道連れにしてやるとか考えてるなら諦めろ。呪文を唱えるより早く貴様を殺す」

「くそ………あと…一撃さえ………」

「ふぅ…まだ言うのかい。諦めろ。もうどうにもならないさ。でも、君の仲間が動くと困るからそろそろ
死んでもらうよ」

 気配で黒球を出したのがわかる。
 自分の命を終わらせる一撃。
 最後の抵抗として俺を見下ろすリッチーを睨みつけた。
 腕が振り下ろされようとして――
 リッチーに変化が起きた。
 正確にはリッチー自信が変化したワケでない、ただ角ともとれる物が頭から生えていた。
 それもよく見れば角ではなく剣だった。
 真っ黒な漆黒の剣。
 それは綺麗に頭から股まで振り下ろされる。

「バ……カ…な…………………」

 リッチーが左右に倒れる。
 その少し後―――――リッチーの後ろにあたる位置にそいつはいた

「真っ二つとはこのようなのでいいのか?」

 そいつ――デニス=ヴァンテバスは何の問題もないような口調でそう言った。

「オマエ…階段潰されたのにどうして……?」

城壁を登った

 ああ………忘れてた。
 そうだった…コイツは
非常識の頑固バカだった
 常識なんて通じやしない。
 でも……そんな奴のおかげで九死に一生を得た俺って………………
 泣かない。
 泣かないぞ、俺は!


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