と、まぁ俺たちの言わせたかった台詞を言わせることはできたものの、状況としては最悪だ。
アルは戦闘能力が高いとはいえ肝心の吸収が使えない。
俺はと言えば銃が見つからない。
そしてリッチーは斬られた腕を再生させて俺たちを壊れそうなくらい睨んでいる。
「ただでさえこの地に縛られ屈辱だというのに……っ!! 貴様らは何をしたんだ? この私に何をした?
人間であるはずのお前らが我が腕を切り落としただと? …………この罪は死で償ってもらうぞ?
ああ屈辱だ! 屈辱だっ!! だから死ねええっ!!!」
リッチーが腕を上げる。そこから信じられないくらいデカイ黒球が現れる。
その大きさは小型の隕石と表現しても問題ないだろう。
―――――――――はっきり言ってどうしようもない、お手上げだ。
だがそれは奴がたった1つの勘違いに気づいていればの話だ。
――――――奴はたった1つだけ勘違いをしてしまった
「アル」
「何だ? いっとくが吸収は無理だぞ。あの野郎怒っててもちゃんと魔力吸わせるのを忘れてない」
「違う」
「んじゃ何だよ?」
「アイツに深めの切り傷をつけて、さらに1秒稼いでほしい……できるか?」
「………誰に言ってんだかっ!!」
アルが駆け出す。俺も続くようにして駆け出す。
どうやら制約のせいで、いま出現させている黒球とアルに吸収させる分の魔力とで精一杯らしい。
攻撃という攻撃は無い。が、デカイ黒球を放たれたらそれこそ終わりだ…その前に―――
リッチーがもう眼の前というところまでアルがたどり着いた。
アルが剣を振る。
リッチーは避けることも、魔法障壁もはることもせずにその一撃をくらう。
そして広がる傷。その傷めがけて俺は手刀を繰り出す。
ぐちゃり―――――と
感じたのはそんな感触だった。
それは肉というよりは泥に触れているようだ。
まるで形というものを知らず、ただ流れの循環のみで構成されている。
「この……人間どもがあああああああぁぁぁっ!!!!」
恐らく無理矢理に引き出したであろう力。
手刀を刺したままでいた俺に
背後から斬りかかろうとしていたアル
2人ともきれいに吹き飛ばされた。
ただ無理矢理な攻撃なためか威力が低かったので受け身はとれた。
だが――――――――――
「フハハハッ!! どうする? 距離がひらいたようだが? ハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」
優越感が湧いて出たのか機嫌よく笑うリッチー。
――――――――――ああ、まだ勘違いに気づいていないのか
「だがもう君たちは死ね。それが当然だろう?」
そう言い黒球を振り下ろす……一歩前。
「俺の変な魔法とやらな『銃魔法』って名前があるんだ。自分でつけたんだけど」
「………時間稼ぎかい? 見苦しい。だがまあいい、こちらも興味はある」
リッチーの腕がピタリと止まる。
それを見て話を続ける。
「すぐすむ。実際詳しくは知らないからな。知ってるのは普通の魔法と違って銃弾と呪文詠唱が媒介になって
るってことくらいだ」
「なるほど…それで魔法に似ているのに魔法とは違う感じがしたのか……しかし魔力を使わずにそれ
と似た現象を発生させるとはね、興味深い。けど駄目だ、死ね」
ニヤリと笑い、黒球を振り下ろそうとするリッチー。
――――――――――――――――まだ気がついていない
「なぁリッチー。さっきから体に異物感がないか?」
「ふん。先ほどの手刀を突き刺した時に持っていた弾丸を埋め込んだだけで―――――――――!!」
動きが自然と止まり表情がサッと変わる。
―――――――――――――――――――――――ようやく気がついた
リッチーのただ1つの勘違い。
それは――――――
俺は銃がなくても『銃魔法』がつかえる、ということだ
「くっ!!」
急いで黒球を振り下ろそうとするリッチー。
無駄だ………こちらの方が早い!
「白の契約によりうまれし剣!!」
叫ぶ。
同時に光の玉が3つ。リッチーの体の中から外へと突き出てくる。
―――――――――埋め込んだ弾丸は3発
そして光の玉は何本もの刃へと変化しリッチーへ襲いかかる。
避けるすべのないリッチーはそのまま光の刃に串刺しにされた。
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