"ディスウィリウム"…正式名称、魔法騎士国家"トルベグナァンド"直営兵士養成所。
 孤児などを拾い、兵士や魔法使いとして育成。そして国の兵として送り出す。
 だが一方で優れた戦闘能力のある者を手元に残し、公的な「何でも屋」として
国、警察機構や軍等を相手に荒稼ぎしている…という面も持ち合わせている。
 そして俺…アルゲス=クイスェッターは孤児として拾われて、今では「何でも屋」として
生活しているワケだ。
 と…まぁ何でこんなこと考えてみたかというと最近は特に仕事も無く暇だからで……
へっぽこってワケじゃないからな? 俺向きな仕事が無いってだけなんだからな?

「No.7。失礼します」

 コンコンと規則的なノックの後、部屋に連絡係の人が入ってくる。しっかし…
いまだにNoで呼ばれるのは慣れない。
 あ〜Noってのは…"ディスウィリウム"の「何でも屋」の仕事はランクでわけられてて、そのうち
AAA〜SSまでのランクの仕事は特殊部隊"ソールド"が請け負うことになってて、"ソールド"に所属してる
奴はみんなNoでよばれるのだ。そう! つまり俺は"ソールド"所属なのだ!!
 それはいいんだ…でもやっぱNoで呼ばれるのはちょっとなぁ〜

「何?」

「ティウル様から仕事だと言って渡しておいてくれと、コレを」

 そう言って書類が手渡される。よっし! 久々の仕事〜!!

「詳しくは今お渡しした書類を読んでくださればわかると思います。何かご不明な点がありましたら
遠慮なくお聞きください」

「ん〜…うん。オッケ、オッケ。特に質問なしっす」

「かしこまりました。では、失礼します」

「ご苦労様〜」

 さってと仕事場所は…ラベリス…ちょっち遠いな。装備はランクA許可っと。珍しいな…
どんな仕事……って『仕事内容については任務先に向かう最中に読め』? ますます珍しい。

「ま、いっか準備しよっと」

 部屋を出て武器とサバイバルキットをとりに行くため、歩き出す。

「アル」

 後ろから声をかけられた。俺のことを略した名で呼ぶのは俺と同じ教室の人間くらいだ。声でわかる

「なんだ?、サリス」

「いや、姿が見えたからさ。仕事?」

「おう」

「久しぶりね〜アルが仕事って」

「ま、な。ところでサリスこそ何でこんなトコに?」

「今から食堂に行くの。まだ朝食べてないのよ」

「はは〜……って、何してたんだよ?」

「山で熊と格闘」

 肩までで切ってある黒い髪。吸い込まれそうな黒い眼。鍛えてるから無駄な肉のない引き締まった体。
 同じ"ソールド"のNoだとはいえ、同じ教室の馴染みとはいえ、1人の女として見れば間違いなく見惚れる
だろう……熊とか言う奴じゃなかったら。

「って、ファムー!!」

 サリスの声につられ前を見る。あ…確かにファムちゃんだ。ちなみに彼女も俺たちと同じ教室で、1つ年下
加えて言うなら彼女も"ソールド"のNoだ。

「おはよ〜〜ファムちゃん」

「…………おはよう」

 俺とサリスの前で立ち止まり、それだけ言って通り過ぎる。……やっぱりかぁ。

「そんなにショックなのかなぁ」

「当たり前でしょ。ファムがどんだけアイツに懐いてたか忘れた?」

「だよな。はたから見たら仲のいい兄妹みたいだったし」

「おまけに音信不通で生死不明。せめて生死くらいはっきりしてればいいのに…あ、食堂。じゃね!
がんばって」

「おう、じゃな〜」

 ひらひらと手を振ってサリスを見送った。俺も準備しないと。
 歩き出す…その前にファムちゃんが歩いていった方を見る。まだ遠目にファムちゃんの背中が見えた。
誰がどう見ても……さみしそう以外に見えない。
 アイツがでていった後のファムちゃんはそりゃひどかった。一週間飲まず食わず眠らずでとても見ていられなかった。
 そう思うと今はだいぶマトモなんだけど、あれ以来彼女は笑わなくなった。クスリともだ。
 まったく本当に生死くらいはっきりしてやればまだ踏ん切りがつくだろうに……

「今頃どうしちまってるのかねカリムの奴は」

 でも、ま、今は仕事だ。さ、額当てして! 準備〜っと〜
 額当ては俺のトレードマークなのさ! でも人は俺を『額当てオタク』と呼ぶけどね(泣)!!


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