「ノンマホ」
「一つも魔法の使えない落ちこぼれ以下のクセに何でここにいるんだお前?」
いきなり眼の前にやって来た男はいかにも嫌味っぽい感じでそんなことを言った。
眼の前の男を睨もうとしてふと、気がついた。
各地方最高の魔法使いである証の、赤のペンダント
鮮やかな赤を放つそれを見て合点がいった。
つまりこいつが例の転校生で、さっそく俺のことを聞いてお越しくださったわけだ。
「落ちこぼれなのは認めるが、だからって学校に来たら駄目なんてことにはならんだろ」
「無駄だ。八年経ってもろくな魔法が使えないんだろ、お前?いくらなんでもそんな話聞いたことが無い」
「もしかすりゃ明日にでも使えるかもしれんだろ・・・・・っ!」
普通なら難なく我慢できるくらいの台詞なのに、何故か少し苛立ってきた。
どうやら眼の前の赤の魔法使いさんは人を怒らせるのが得意なのかもしれない。
「だから無駄だって。諦めてとっとと帰んなよ、何なら僕の助手でもしてみるか?」
「こっちからお断りだ。だいたい魔法が使えなくてもお前には負けない」
「へえ!僕と勝負するのか!?いいぜ!やってみよう!君が仮にも赤の魔法使いの僕にどう勝つのか見せてくれ!!」
「ああ、やってやる。いいか俺が勝ったらお前・・私は俺に負けましたって宣伝しながら街歩いてもらうぞ」
「じゃあ僕が勝ったら君は一生僕の助手になる・・・でいいね?」
「ああ」
つい喧嘩を売ってしまったがマズイ
勝てるはずがない
どうすれば魔法の使えない俺がこの地方で一番強い魔法使いに勝てるというのだ?
「で、勝負は何にするんだ?」
「あー・・・・・・」
どうする!どうする?どうする!?
頭の中が混乱し始める。
だけどこの状況をどうにかするなんて・・・・・
「その勝負、僕も混ぜてもらいますよ?」
横からの声に二人して振り向くとそこには何だかひ弱そうに思える男が一人立っていた。
首には黒く光るペンダント
え、えええええええっ!!?
世界最高の魔法使いの証の黒のペンダント!?
混乱はますますひどくなった。
見れば赤の魔法使いも驚いている。
「駄目ですか?僕がそこの魔法の使えない彼に協力するのは」
「だ、駄目も何もそれでは僕が負けるのは眼に見えてるじゃないですか!?」
「はぁ、でも大丈夫じゃないですか?だって――――――」
のほほんと喋る黒の魔法使いはそのまま驚くべき事を述べてくれた。
「だって僕も魔法は使えませんから」
何?
世界最高の黒の魔法使いが魔法を使えない?
ああ、もう何だってんだよ、どうなってんだ!?
ただただ混乱することしかできないでいると黒の魔法使いと眼が合った。
黒の魔法使いはにっこりと笑った。
お蔵入りネタ「魔法の使えない魔法使い」の一部。これはこれで書いてみたいんですけどねぇ〜
小説ページへ
TOPへ